日本人にもつきつけられる“選挙”の意味

アメリカの最高裁が女性の中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド」判決を覆す決定を下したことで、セレブリティたちが声を上げ、行動を起こしている。

トランプが「なんで俺が呼ばれてないんだッ!」とおかんむり!?

米連邦最高裁は24日(現地時間)、1973年に人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判例「ロー対ウェイド」を49年ぶりに覆した。これにより、最大で28の州が中絶を非合法化または制限する可能性があると推定される。

この決定を受けて、バラク・オバマ元アメリカ大統領とミシェル・オバマ夫人、テイラー・スウィフト、セレーナ・ゴメスといったセレブたちがSNSで反発の声を上げている。

オバマ氏はツイッターに「今日、最高裁は50年近くにわたる判例を覆しただけでなく、人が下すことのできる最も個人的な決定を政治家やイデオロギーの気まぐれに委ね、何百万人ものアメリカ人の本質的な自由を攻撃しました」とツイート。

ミシェル夫人は「私は、自分の体について十分な情報を得た上で決断する権利を失ったこの国の人々のために心を痛めています」という言葉で始まる長文のコメントをツイッターに投稿した。

テイラー・スウィフトは、このミシェル夫人の声明を引用リツイートし、「私たちが今どんな場所にいるかということが本当に恐ろしいです。何十年にもわたって、女性が自分自身の身体を守る権利のために戦ってきたのに、今日の決定でそれが剥奪されたのです」と綴った。

アメリカの4つの州(ケンタッキー州、ルイジアナ州、オクラホマ州、サウスダコタ州)において、中絶はトリガー法のため、すでに違法とされている。
スウィフトが拠点としているナッシュヴィルのあるテネシー州は判決後30日以内に中絶を違法とするトリガー法を制定する13州のうちのひとつである

セレーナ・ゴメスは「憲法上の権利が剥奪されるのを見るのは恐ろしいことです。女性には自分の体をどうしたいかを選択する権利を持つべきです。そういうことです」とツイートし、続けて、アメリカで女性の性と出産に関する啓蒙活動を行う医療NPO「プランド・ペアレントフッド」への支援を呼びかけ、「安全で合法的な中絶にアクセスする必要な手段を持たない人たちがどうなってしまうのかが心配です」と重ねた。

イギリスで開催されていたフェスティバル、グラストンベリーに出演したビリー・アイリッシュは「今日はアメリカの女性にとって、本当に真っ暗な日です。今この瞬間にそれを考えることがもう耐えられない、とだけ言います」とステージ上で語った。

同フェスティバルに出演したオリヴィア・ロドリゴもステージ上で、「ロー対ウェイド」判例に反対票を投じた判事5名の名前を挙げて、「結局、あなたたちは自由なんてどうでもいいと思っていることがわかった」として、「次の曲はあなたたちに捧げます」と発言、ステージに迎えたリリー・アレンと2人でアレンの名曲「Fuck You」を演奏した。

女性セレブだけではなく、ジョン・チョウは「極端な少数派の専制政治」と痛烈に批判し。

「ワン・ダイレクション」のメンバーで、現在はソロで活動中のハリー・スタイルズは「今日、アメリカの人々のことを思って完全に打ちのめされています。友達の様子を確かめてください。お互いを気にかけてあげください。私たちは皆一緒にいて、戦いは始まったばかりです。アメリカにとって、本当に暗い日です」とツイートした。

エリザベス・バンクスのように「誰もが銃を手に入れるけれど、誰も体の自律性を手に入れない。アメリカです」と、遅々として進まないアメリカの銃規制の動きと絡めて語る向きも多い。

パトリシア・アークエットは「この最高裁は絶対的な災難です。銃を携帯する権利を与えることから、女性の身体に対する自律の権利を奪うことまで。私たちは、それが起こることを予見していたのです。私たちは反応しなかったわけではなく、それが起こるのをわかっていました」

アークエットとTVシリーズ『CSI:サイバー』(15〜16年)で共演し、現在はミュージシャンとして活躍する日系アメリカ人アーティストのヘイリー・キヨコは「人々が自分の投票が『重要ではない』とか『どうせダメだから』と話すけれど……でも、6年前に私たちは1人の男性を選び、それによって最高裁の3つの議席が選出されたました。そして今日、その3人は自分たちの力を行使して女性と人々が己の将来を決める権利を奪いました」と、6年前の大統領選でドナルド・トランプ氏が大統領に当選した結果、トランプ大統領が選出した判事3人が、49年ぶりに判例を覆した事実を指摘した。

ヘイリー・キヨコの言葉は、7月10日に参議院選挙の投開票を控える日本で投票権を持つ人々が自分の身に置き換えてみることもできるものだ。

自分が投じる一票だけでは物事は変わらないと考えるのか、それとも投票しなかったことで、結果的に自分の望まない事態の実現に加担する可能性を想像するか。日本の投票者はどう行動するだろうか。