コミカルな顔芸で新境地!
あの濃い顔は劇画の実写化向き!?
14歳の時に『誰も知らない』で第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞し、一躍脚光を浴びた俳優・柳楽優弥。しかし、その後、『包帯クラブ』など透明感あるナイーブ路線を逸脱せずに続けるも、鳴かず飛ばずな結果に。
・【この俳優に注目】前編/焔モユルがハマりすぎ!『アオイホノオ』の柳楽優弥から目が離せない
だが近作『許されざる者』ではワイルドで汚い風貌のアイヌ出身の青年役を演じ、それまでのイメージを変化させた。『クローズEXPLODE』でもカリスマ不良を演じてワイルドさを見せつけた。しかし、まだまだ一皮むけたとは言えないところ。濃い顔立ちで爽やかさには欠けるのだから、もっと気持ち悪い役をやればいいのにと個人的に思っていた。
そんなとき柳楽が見せてくれたのが『闇金ウシジマくん Part2』のストーカー役だ。同じヒゲ面の汚い風貌でも、ワイルド系ではなく細身でめっちゃ気持ち悪い。情緒の危うい雰囲気もナイーブではなく、完全にヤバくて近づきたくないヤツだ。社会の底辺をさまよう気持ち悪くヤバい男を演ずる彼を見て、いいぞ!こんな彼を見たかった!とひとり熱くなっていた。
そして今回、これで柳楽もすっかり一皮むけたな!と確信できたのがテレビ東京系の深夜ドラマ『アオイホノオ』だ。原作は「逆境ナイン」などの島本和彦の自伝的なコミックで、柳楽は漫画家を目指しながら大阪芸大に通う主人公・焔モユルを演じている。ドラマ化とキャスティングの発表を聞いた当初は少々違和感を覚えたのも事実だ。柳楽がかっこいい路線ではない方向性をさぐることには賛成だが、彼がこの作品の主役というのがなんだか唐突でイメージできなかったのだ。思いっきり80年代どっぷりのムードと薄っぺらくダメダメなくせに自信過剰な主人公の無駄な熱さがないとこの作品は成立しない。そのどちらもが柳楽からイメージできなかった。
しかし、放送前に公開されたビジュアルを見ただけで前言撤回。トレードマークの炎柄のトップスとダサいデニムに身を包み、少年漫画の定番の逆立ったヘアスタイルもそのまま再現した彼はまさに焔モユル! これは案外イケるかもしれないとハードルを上げてドラマを見ると、その高くなったハードルを悠々と超えてくれたではないか!!
周囲の者の才能に打ちのめされてショックに号泣したかと思えば、ちょっとしたアイデアを思いついただけで天下を取った気になって高笑いする、感情の振り幅の激しい暑苦しくてバカな主人公が、面白いほど柳楽にハマっている。本人が真剣であればあるほど笑えるコメディにピッタリなのだ。繊細な演技よりも顔芸に近いオーバーアクションのほうがイキイキしているし、ワイルド系よりもオタクのほうが断然似合っている。それに、あの濃い顔は劇画の実写化向きだというのは目からウロコの発見だった。
これからも柳楽には、ぜひ気持ち悪い系やオタクを演じて欲しいし、コメディにもどんどん挑戦して欲しい。『アオイホノオ』は柳楽優弥の新しい代表作となる、と私は自信を持っている。なぜかって?「自信ってのは……根拠がないものなんだよ。自信ってのは根拠がないものなんだよ!」と2回言っておこう。(文:入江奈々/ライター)
『アオイホノオ』はテレビ東京系にて放送中。
【関連記事】
・映画化が相次ぎ脚光を浴びる作家・佐藤泰志、ブームの火付け役が語る苦難の道
・父・ジョージ秋山の原作マンガを映画化した秋山命が語る、父への思い
・【この俳優に注目】単なるセックス・シンボルでは終わらない卓越した才能をもつ天才女優
・『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『名探偵コナン』…子ども向け映画シリーズの長寿の秘密
PICKUP
MOVIE
INTERVIEW
PRESENT
-
【吉田大八監督登壇】『敵』Q&A付き試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2024.12.30 -
安田淳一監督のサイン入りチェキを1名様にプレゼント!/『侍タイムスリッパー』
応募締め切り: 2025.01.10