60年前の今日(8月6日)、ジャマイカは292年に渡る英国の支配から独立した。今回は60回目のジャマイカ独立記念日にちなみ、レゲエアーティストにしてジャマイカの大スター、ボブ・マーリーのドキュメンタリー映画『ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド』をご紹介しよう。彼の貧しい生い立ちからミュージシャンとして成功するまで、そして病に倒れてわずか36歳でこの世を去るまでの軌跡を、彼の数々の名曲と共に振り返る作品だ。
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黒人でも白人でもないその中間、という疎外感
レゲエにさして興味がない人でも、ボブ・マーリーの名前だけは知っているという人は多いだろう。そして、ジャマイカと言えばレゲエ、レゲエと言えばドレッドヘアの黒人がやる音楽、といったステレオタイプのイメージがあるのではないだろうか。だが、レゲエのレジェンド的存在のボブ・マーリーは、実は黒人と白人のハーフであった。ボブの妻であるリタ・マーリーが「本当は背が高くて肌が黒い人がタイプだったけど、ボブの肌は茶色だったわ」と語っているように、彼はジャマイカ社会では浮いた存在だった。ボブの父親は英国人の白人男性。だが彼が自分の息子とその母親を顧みることはなく、ボブは父親の顔を知らずに自分と母を捨てた男を恨みながら育ったのである。
にもかかわらず、のちに国民的英雄となったボブは7人との女性の間に11人の子供を設けた。作中では、妻のリタをはじめボブと親密な関係にあった女性たちの証言を聞くことができる。彼女たちは、愛国心あふれるジャマイカの英雄は「女性には極めて不誠実だったわ」と苦笑するのである。
対立する二大政党の党首がステージ上で握手! 伝説のライブ
1976年、ボブは政治キャンペーンに参加したことから、ジャマイカの二大政党「人民国家党」と「ジャマイカ労働党」の対立抗争に巻き込まれて銃を持った男たちに襲撃され、2発の銃弾を受ける(幸い命はとりとめた)。だがその2年後に開催された「ワン・ラブ・ピース・コンサート」で、ボブは観客としてライブ会場に来ていた対立する各政党の党首をステージに呼び、観衆の前で和解の握手をさせるという伝説的偉業を成し遂げたのだ。女性には不誠実だが、深い人類愛にあふれる平和主義者だったのである。
ボブ・マーリーの曲を知っている人も知らない人も、レゲエが好きな人もそうでない人も、彼の楽曲と生き様に触れることができるこの作品を見たらきっと彼に興味を持ち彼の曲が聴きたくなるのではないだろうか。彼がわずか36歳で悪性腫瘍によりこの世を去ってしまったのは、実に惜しい。(T)
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