【今日は何の日】「世界アルツハイマーデー」に見たい良作2選、超高齢社会が直面する問題を考える

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ファーザー
『ファーザー』
(C) NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CIN?-@ ORANGE STUDIO 2020

9月21日は、世界アルツハイマーデー。1994年のこの日、「国際アルツハイマー病協会」の国際会議で、患者やその家族への支援を進めることなどを謳った宣言が採択された。アルツハイマー病は、認知症を引き起こす疾患の一つ。一方、認知症は病気ではなく、認知機能が低下して日常生活に支障が生じている状態をいう。アルツハイマー病にしても認知症にしても、超高齢化社会とは切り離せない問題であり、日本でも世界でもさまざまな取り組みが行われている。そこで今日は、アルツハイマーや認知症を題材にした2本の映画を紹介したい。

記憶や認知が散っても愛は残るのか。アンソニー・ホプキンスの名演が光る『ファーザー』

認知症患者の目から見る世界は? ホプキンスがオスカー受賞『ファーザー』

認知症患者の目からは、どのように世界が見えているのだろうか…。本作は、認知症を患った父親と娘の揺れる絆を、父親の視点から描いた作品だ。父親を名優アンソニー・ホプキンスが演じ、ホプキンスは本作でアカデミー主演男優賞を受賞。娘のアン役は、オリビア・コールマンが演じている。

娘が別人の姿になって帰ってくる。自分の家にいると思ったら自分の家じゃない。時間も、目の前の男が誰かもわからない…。そんな認知症患者の混乱を、本作は脚本と映像のマジックによって巧みに見せている。

まさに認知症患者の気持ちを疑似体験できる映画であり、症状が進んでいく恐怖を痛いほどに味わえる。ホプキンスの演技が全編通して素晴らしいが、ラストシーンは特に注目。

 

老老介護の現実と家族の愛を映す『ぼけますから、よろしくお願いします。』

認知症を発症した80代後半の母と、95歳の父。本作は、テレビディレクターの信友直子が、「2人で寄り添って生きていく」と決めた両親の姿を追ったドキュメンタリー。今年3月には、続編である『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』も公開された。

(c)2022『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』製作委員会

(c)2022『ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~』製作委員会

老老介護の現実は厳しい。明るくて社交的、料理上手だった母は次第に家事ができなくなり、代わって父が家事をするように。時々立ち止まって、休みながら買い物をする父の姿を見て、娘である信友監督はカメラを放り出して助けたくなる瞬間もあっただろう。

しかし、それでも信友監督はカメラを回し続けた。だからこそ、この映画には認知症患者と、それを支える家族の姿がありのままに映し出されている。見ていてつらくなる場面もあるが、70年間連れ添ってきた父、そして娘の、母に対する思いを存分に感じる愛に溢れた作品だ。

9月は「世界アルツハイマー月間」でもある。今月は映画をきっかけに、アルツハイマー病や認知症について理解を深めてみてはいかがだろうか。(Y)