「映画好き」と言われれば言われるほど、聞きづらくなるのが映画の一般常識。理解しているようでいて実はよく知らない。こっそり訊ねたら「そんなこと知らないの?」と呆れられそう。本コラムでは話題の映画ブルーレイを題材にしながら、いまさら聞けない映画の一般常識や用語についてお話していこう。
●今回のお題「グレーディング」
●オススメBlue-ray『ブレックファスト・クラブ:30周年アニバーサリー・エディション』
2回にわたって紹介したデジタル・リマスター、その最終段階の作業がグレーディングである。ここでは、色調(色の濃淡、色合い、色温度の高低)、明るさ(明度、コントラスト)、精細感(シャープネス)などが細密に調整される。一例を挙げれば、褪せていた色彩を鮮やかに修正したり、黒が明るく浮かび上がった(黒浮き)画面を、黒を締めてメリハリをつけたりする調整が施されるのである。
・【超簡単! いまさら人に聞けない映像用語辞典 10】8人体制で3週間! 映像を修復・復元するデジタルレストア工程の細密な作業
作業はカラリストと呼ばれる専門技術者が担当。撮影時の照明や天候や個々のレンズ、カットごとの最終的な仕上げデータ等を参考にしながら作業が行われる。使用されるのは業務用マスターモニターだが、近年では家庭用4Kテレビでも同時に確認される。
カラリストはオリジナルの画調をイメージして調整にあたる。しかしより正確を期すために、監督や撮影監督といった作品に携わった関係者が作業監修に呼ばれることも多い。
前回紹介したデジタルレストア(修復)と同様に、グレーディングではスキャニングの精度が作業に影響を及ぼす。オリジナルネガからスキャンなのか、ポジからなのか。4K解像度スキャンされたのか、2K解像度なのか。カラリストはさまざまな判断を迫られるわけだ。
デジタル・リマスターといえば、ジョン・ヒューズの85年監督作『ブレックファスト・クラブ:30周年アニバーサリー・エディション』の登場もファンには嬉しいニュースであろう。リリースは6月24日予定。米国盤ブルーレイは4月に発売されているが、国内盤も同じマスターが使用されている。
作業はL.A.のユニバーサルスタジオ・デジタルサービスで行なわれ、責任者マイク・ダルティ氏によれば「すでにこの作品は製作25周年版としてブルーレイ化されているが(日本では2011年発売)、グレーディングによって精細感や色調をアップグレードさせ、よりオリジナルに近い映像再現となっている。フィルム撮影作品なので、フィルムらしい柔らかな画調の再現も大切にした」という。
さて次回は、ちょっと目先を変えて3Dのお話し。お楽しみに。(文:堀切日出晴/オーディオ・ビジュアル評論家、オーディオ・ビジュアル・ライター)
次回は6月5日に掲載予定です。
堀切日出晴(ほりきり・ひではる)
これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。
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