井上真央が、『わたしのお母さん』の東京国際映画祭での上映に出席。杉田真一監督と共に舞台挨拶に登壇し、本作にまつわるトークで会場を盛り上げた。
・井上真央が、無邪気な笑顔の毒母・石田えりを見て思わず目をそらし…。
井上真央を起用した理由は「佇まいの説得力」
鑑賞直後の観客を前に、杉田監督は本作の企画について「映画の企画を考えていたころ、母と娘の問題を目にすることが多く、掘り下げていくと、この問題の語られ方に違和感を覚えた。一括りには語ることができないと分かり、興味を持ったのがきっかけです」と話す。母親役に石田えり、娘役に井上真央を起用した理由については「この二人がいなければ映画は成り立たなかった。一言で言うと決め手は、『石田さんは年々増していく現役感』『井上さんは佇まいの説得力』だと思います」と語った。
母との関係に苦悩する娘役を演じた井上は、「母と娘の映画と聞いて、はじめは親子の話をドラマティックに描くのかなと想像しましたが、そうでは無くて。でもこの映画で、私が演じた夕子のように、親子関係に苦しむ人や生きづらさを感じている人に届けられるものがあるのではないかと思いました。役として夕子を生きる、そこに存在する、というのは難しかったですね」と、苦労を振り返る。
タイトルにちなんで母との一番の思い出について聞かれると、井上は、「昔、仕事のために母とよく電車で移動していたのですが、駅の売店でお菓子を買ってもらったことですね。大人になっても、そのお菓子を見るとその頃のことをよく思い出します」と語った。
また、観客とのQ&Aでは、井上の熱演がみられるラストシーンについての質問が多数あがり、井上は、「ラストで初めて夕子が本音を言えたのだと思います。ラストの夕子の表情については、見る人によって解釈が異なり、面白い感想も頂きました。監督もこの映画のテーマとして、感情や物事について何か特定することを避けて描いていましたので、見る人それぞれの自分の物語として捉えてもらえると嬉しいです」とコメント。
また、本作の特徴である、セリフが少なく表情で見せるシーンが多いことについて井上は「印象に残っているのは、はじめの母と娘の再会シーン。色々動きを付けたり試したのですが、結局は、何もしない姿を長回しで撮影しました。これは台本にもなかったシーンでしたね」と振り返った。
これに対して監督は、「井上さんの芝居を見るとセリフが無くても伝わるな、と感じた。何もしなくても井上さんの佇まいで語ることができる、それをちゃんと映すべきだと判断しました」。
セリフがなく歩くシーンを大事にしたいと監督に言われたことについて、井上は、「歩くだけで夕子の気持ちを表現するのは難しいなと悩んだのですが、監督から『溢れそうな一杯のコップを持ちながらこぼれないように歩いている感じ』と言われて、何となく腑に落ちたんです」と、監督と現場でしたやり取りを明かした。
『わたしのお母さん』は11月11日より全国順次公開。
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