12月1日は世界エイズデー。世界レベルでのエイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的にWHOが1988年に制定したもので、毎年この日を中心に世界各国でエイズに関する啓発活動が行われている。
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今や適切な治療を受ければ発症を抑えられるようになり、「死の病」ではなくなったエイズだが、世に広まり始めた当初はどのような認識だったのだろう。そこで今回は、エイズがまだ「不治の病」と呼ばれていた時代を舞台にした2作品を紹介しよう。
エイズで母親を失った少女のリアルな心情を表現『悲しみに、こんにちは』
両親を亡くした6歳のフリダは、若い叔父夫婦のもとで暮らすことに。本作は1993年、スペイン・カタルーニャに暮らす“一家”が、本当の意味で家族となるまでを描く物語だ。
1980年代以降から世の中に知られるようになったエイズ。作中で明言はされていないが、フリダの母親の死因もエイズである。周りがあからさまにフリダの血を避ける様子から、当時の人々にはエイズについて正しい知識がなく、差別や偏見の目でエイズ患者を見ていたことが伝わってくる。
母親と死別しただけでなく、周りからも差別的な目で見られ、新しい家族とも打ち解けられない環境はどれほど不安なことか…。フリダはそのストレスを、わがままを言ってみたり、従姉妹のアナに意地悪したり、少し歪んだ形で外に出すのだが、その演技はドキュメンタリーのようにリアルだ。
特に、フリダが思わず感情を溢れさせるラストシーンは必見。6歳の少女の繊細な感情を、表情や空気感で味わえる作品となっている。
エイズで死去したロックスターの波乱万丈の人生『ボヘミアン・ラプソディ』
エイズで亡くなった著名人は数多くいるが、中でもフレディ・マーキュリーは有名だろう。『ボヘミアン・ラプソディ』は、イギリスのロックバンド・クイーンのボーカルだったフレディに焦点を当て、1970年のクイーン結成から1985年のライヴエイド出演までを描いた伝記映画だ。
1991年、フレディの死は世間に大きな衝撃を与え、エイズという病気の恐ろしさを広めるきっかけともなった。本作の中でも、フレディが医師にHIVへの感染を言い渡されるシーンが描かれている。サングラス越しに映る景色にフレディの心情が映し出される、印象的なシーンだ。
フレディの死後、フレディ追悼のため、そしてエイズ撲滅のためのチャリティー・コンサートとしてフレディ・マーキュリー追悼コンサートが行われ、世界各国で中継された。また、同じくフレディの死後に再リリースされた「ボヘミアン・ラプソディ」の印税は、その遺志によってエイズの基金として寄付された。
フレディの死は、エイズの恐ろしさを広めるだけでなく、エイズについての正しい知識を広めるきっかけともなったのだ。本作は主演ラミ・マレックがフレディの動きを“完コピ”し話題を呼んだ圧巻のパフォーマンスも見どころだが、エイズ患者やLGBTへの偏見が強かった時代背景も想像しながら見てもらいたい作品だ。(Y)
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