(…前編より続く)
〇【5位予想】『セーラー服と機関銃 卒業』
1981年に薬師丸ひろ子で映画化した『セーラー服と機関銃』のその後を描いた赤川次郎原作の小説を、「1000年に1人の逸材」と言われたアイドル・橋本環奈主演で映画化。目高組解散後、「メダカカフェ」を経営する18歳の女子高生・星泉が、ある出来事をきっかけに目高組を復興し、他の組との抗争に巻き込まれていく姿を描く。共演に長谷川博己、安藤政信、武田鉄矢らが顔を揃える。
過去、薬師丸ひろ子、原田知世、長澤まさみが演じた星泉。作品の知名度は非常に高く「KADOKAWA映画40周年記念作品」という冠もついた特別な映画だ。薬師丸ひろ子版は配給収入約23億円(興行収入ベースでは約47億円)という大ヒットを遂げ、薬師丸が発する「カ・イ・カ・ン……」というフレーズは社会現象にもなった。
橋本は製作会見で「重圧を封印します」と宣言したように、作品の意味は十分理解している模様。その後のイベントでも元気いっぱいの姿をみせ、新たなる『セーラー服と機関銃』をイメージづけた。劇場公開数は約240館とそろった。橋本のファンと作品ファンには世代間ギャップがあることは否めず、どちらにターゲットを絞るプロモーションを展開するかは非常に難しいところだが、7万-8万人ぐらいの集客は見込めそうだ。
▲【6位予想】『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
リーマンショックで大恐慌となったなか、経済破綻をいち早く察知しウォール街を出し抜いた4人の人物を描いた物語。第88回アカデミー賞では作品賞ほか5部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した。4人の男たちをクリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピットが演じる。
主演のクリスチャン・ベールといえば、近年では『ダークナイト』シリーズが有名で、日本でも集客力のある俳優だ。主演作『エクソダス:神と王』(15年/20世紀フォックス)は全国678スクリーンで公開され初週土日動員14万1000人、小規模で公開された『アメリカン・ハッスル』(14年/ファントム・フィルム)、『ザ・ファイター』(11年/ギャガ)も10位、12位と大健闘をみせている。
上映館数は約220館。リーマンショックの裏側で大成功を収めた人間という題材は非常に魅力的だが、作品自体は経済用語も多数出てきてディテールを把握するのはややハードルが高い印象。ポップに描かれている部分も多く、その辺りをどこまで強調できるかが集客のカギになりそう。豪華キャストの演技は一見の価値あり。
△【9位予想】『星ガ丘ワンダーランド』
世界的に評価の高いCMクリエイター柳沢翔が手掛けた初映画監督作品。幼いころに母親と別れた青年のもとに母親が自殺したという一報が届くことにより、空白の時間を埋めようとする人々の思いが交差していく様を描く。主演はドラマ『下町ロケット』の正義感の強い若手社員の演技で注目を集めた中村倫也、共演に佐々木希、木村佳乃、松重豊、菅田将暉、市原隼人、新井浩文ら。
劇場公開数は約50館。中村は現在放送中のドラマ『お義父さんと呼ばせて』(関西テレビ・フジテレビ系)で女装姿を公開したり、佐々木が劇中ほぼノーメイク姿をみせたり、木村佳乃が本作の主題歌を担当し15年ぶりに歌声を披露するなどニュースソースは盛りだくさん。現在妊娠中の杏も出演している。小規模公開のためランクインは厳しいかもしれないがしっとりとした作品に酔いしれるのもいいかも。
【注目シネマ】
*『桜ノ雨』
ボーカロイドにより人気となり大ヒットした楽曲「桜ノ雨」を題材にした映画。合唱部に所属する高校生たちが抱える悩みや希望を切なく描く。主人公・未来を演じるのは映画初主演となる山本舞香。
劇場公開数は約50館。主演の山本はJR東日本「JR SKISKI」のCMなどでの存在感が話題になり、ネクストブレイク必至と各メディアで取り上げられている存在。楽曲自体の人気も高く、若い世代への浸透力は集客力に結び付きそうだ。(文:磯部正和/映画ライター)
磯部正和(いそべ・まさかず)
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。
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