性的暴行事件を暴いた女性記者たちの実話、正義を求めて行動する勇気に敬意
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ワインスタイン事件を映画化『SHE SAID /シー・セッド その名を暴け』
【週末シネマ】2017年10月、アメリカの大物映画プロデューサーだったハーヴェイ・ワインスタインが数十年にわたって重ねてきた性的暴行を告発する記事がニューヨーク・タイムズ紙に掲載された。なぜ事件は明るみに出ることなく、実態を知る人々は口をつぐみ続けたのか? 度重なる妨害を受けながら、被害者たちの信頼を得て事実と真相に迫る女性記者2人、ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターの回顧録を原作に、記事が世に出るまでの実話を映画化したのが『SHE SAID /シー・セッド その名を暴け』だ。
・“お持ち帰り”だなんてふざけるな! 痛快だけでは済まされない、若き女性の捨て身の裁き
新聞社で調査報道にあたる記者2人というと、ウォーターゲート事件を調査したワシントン・ポスト紙の記者2人の実話を映画化した名作『大統領の陰謀』(76年)を思い出すが、本作もサスペンスとドラマとしての見応え十分な社会派エンターテインメントになっている。
大統領選挙や職場環境についてなど、数多くの調査報道の実績を誇るトゥーイーとカンターは、ワインスタインの性的暴行の噂を聞いて調査に乗り出す。被害者とされるのはワインスタインの映画会社の社員から、スターを夢見る若い女性、ワインスタインの映画に出演して実際にスターとなった女性まで数多いる。だが、毎年のようにアカデミー賞受賞作を量産した大物プロデューサーという圧倒的な権力者に口を封じられた被害者の女性たちが声を上げるのは簡単なことではない。さらにトゥーイー自身も産後うつ気味で心身とも万全な状態ではなかった。それでも2人は世界各地にいた被害者たちを訪ねて歩き、やがて女性たちもその熱意に応え、実名で証言を引き受ける者も現れる。
キャリー・マリガンとゾーイ・カザンほか女優たちが魂に訴える名演
『プロミシング・ヤング・ウーマン』のキャリー・マリガンがトゥーイーを、『ルビー・スパークス』『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』のゾーイ・カザンがカンターを演じる。実生活でも2008年に舞台で共演して以来の親友同士である2人の息はぴったりで、『大統領の陰謀』のロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンのコンビを彷彿させ、オフィスで語らう姿など、同作へのオマージュのようなカットもある。
マリガンとカザンは言うまでもなく、キャストの女性たちが皆素晴らしい。自分たちが属する世界で起きた忌まわしい事件に対する怒り、勇気を持って実名で告発した女性たちに対する敬意と連帯は、俳優たちに特別な力を与えたのではないかと思える、魂に訴えかけてくる名演だ。
ワインスタインの元で働いていた際、被害について見て見ぬ振りを強いられたり、あるいは実際に被害者となった女性を演じたサマンサ・モートンとジェニファー・イーリー、そして2017年の記事に実名で告発した俳優の1人であるアシュレイ・ジャッドは本人役で出演している。劇中に名前が出てくるグウィネス・パルトロウも電話の声で本人役を演じた。
過去を忘れようとする者、消えない記憶に苦しむ者、真摯に事実を追う者。それぞれ葛藤し、乗り越えていく女性たちの様子にリアリティを持たせつつ、ドラマティックに演出したのは、『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』のマリア・シュラーダー監督。#MeTooという大きな運動が生まれるまでの背景を今一度振り返り、正義を求めて行動する勇気の尊さをストレートに描いている。(文:冨永由紀/映画ライター)
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』は2023年1月13日より全国公開中。
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