サーキュラーエコノミー(循環型経済)の最先端にあった江戸時代の風景
名匠・阪本順治監督が、主演・黒木華、共演・寛一郎、池松壮亮で送る最新作『せかいのおきく』より、新場面写真を紹介する。
・黒木華、糞尿処理に携わる男たちと出会い心通わせる…? 江戸時代のライフスタイル描く意欲作は「今の時代に繋がる尊さがある」
日本映画界を長年にわたり牽引してきた阪本順治の監督30作目は、初のオリジナル脚本による時代もの。とはいっても、髷姿の侍たちが斬り合うような活劇ではない。社会の底辺を生き抜く庶民に目を向け、苦難に直面しながらもたくましく、したたかな彼らの姿を通し、“人と人のぬくもり”と“いのちの巡り”を映し出す。
主演はその卓越した演技力でもはや日本映画界に欠かせない存在となった黒木華。共演には、祖父に三國連太郎、父に佐藤浩市を持ち、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では歴史に残る大事件の実行犯・公暁役で話題となった寛一郎。そして、数々の主演作で日本映画界を牽引し、『シン・仮面ライダー』の公開も控える池松壮亮。
日本が世界の大きな渦に飲み込まれていった江戸末期。寺子屋で子供たちに読み書きを教えているおきくは、ある雨の日、厠のひさしの下で雨宿りをしていた紙屑拾いの中次、下肥買いの矢亮と出会う。
武家育ちでありながら、今は貧乏長屋で質素な生活を送るおきくと、古紙や糞尿を売り買いする最下層の仕事に就く中次と矢亮。わびしく辛い人生を懸命に生きる3人は、やがて心を通わせていくが、ある悲惨な出来事に巻き込まれたおきくは、喉を切られ、声を失ってしまう――。
心を閉ざしたおきく、彼女に淡い思いを寄せる中次、そして過酷な世の中を糞くらえと笑い飛ばす矢亮――3人はともに青春を駆け抜け、果てしなく広がる“せかい”の輝きに触れる。
紹介する場面写真は、貧乏長屋で暮す武家の娘おきく(黒木)が、想いを寄せる中次(寛)のためにおにぎりを握る姿、中次に届けて恥じらうおきく、そして雪の中、手を取り合うおきくと中次のふたり。この先にどんなドラマが起きるのか、期待が高まる場面だ。
また、下肥買いとして生計を立てる中次と矢亮(池松)の息の合ったバティぶり、天に向かって柏手を打つおきくの清々しい表情、おきくの父・源兵衛が中次に「せかい」という言葉の意味を教える重要なシーンで、寛と佐藤の親子が共演する場面もある。
物語の背景には、糞尿を肥料として農業に用いるなど、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の最先端にあった江戸時代の日本の風景が重ねられている。日本を代表する美術監督であり、本作で企画・プロデュースを務めた原田満生は、「この映画で観る人の環境意識が変わるとは思わないが、こんな時代があったことを多くの人たちに、特に若い世代の人たちに知ってもらいたい」と語る。
『せかいのおきく』は4月28日より全国公開。
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