『ミッドサマー』のダニーや『13日の金曜日』のアリスも! ホラー映画に登場する「ファイナル・ガール」とは?
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【第3回】「あれ何なの?」ホラー映画に登場する単語やモノを解説〜ファイナル・ガール編〜
【ホラー&オカルト映画のキーワード解説】本コラムでは、ホラー映画やオカルト的要素が含まれる作品、猟奇殺人モノなどで頻出する単語やガジェットを解説していく。
映画に登場する装置がどんな歴史を持っているかや、どのような使われ方をしていたのかを理解しておけば、より味わいが深まるというものだ。と断言したが、第1回は「ゾンビ」、第2回は「丁度良いところにある鉈」と、別に知らなくてもいい知識である。第3回は「ファイナル・ガール」について書く。果たして本原稿はこの先生きのこれるのか。というのは古いネットミームである。
・【第2回】「あれ何なの?」ホラー映画に登場する単語やモノを解説〜丁度良いところにある鉈編〜
・謎の化け物に「地獄に堕ちる」と宣告された人々の末路は…宗教、人間が複雑に絡み合うホラー『地獄が呼んでいる』
ホラー映画では、大体女性が最後まで生き残る。『悪魔のいけにえ』のサリー・ハーデスティも、『13日の金曜日』のアリス・ハーディーも、別に70年代の作品を召喚しなくとも、最近では『ミッドサマー』のダニー・アーダーだって、『X エックス』のマキシーンだって激しく生き残っている。
この人物類型は、映画であれば1960年代以降に量産されたホラー作品から誕生している。「なんかよくわからんけど、若い女の子が殺人鬼に追われたり対決したりするよね」と、映画研究の分野で注目され、キャロル・J・クローバーによって「ファイナル・ガール」と命名された。
クローバーは1987年に、論文「彼女の身体・彼自身」にて、ファイナル・ガールの概念を提唱した。著書である『男、女とチェーンソー:現代のホラー映画とジェンダー』という、「69年はエロな年」とか「あなたと僕のLOVE関係」のような、セルジュ・ゲンズブールのごとき邦題がつけられた著書にも、ファイナル・ガールについて記されている。
ファイナル・ガールの定義とは?
クローバーが1960〜80年代にかけて制作されたホラー・スラッシャー映画を調査した結果によると、ファイナル・ガールには以下のような特徴があると結論づけられている。
①劇中で殺害される女性と比べて性的魅力に劣るが、知的で注意深く、分別もある
②中性的な名前が多い
③自らの力をもって状況を打開する。最終的には安息地に行き着くか、敵方を倒す
現代のホラー映画に照らし合わせても、特徴的には大体同じだと言えるだろう。しかし、我々が「ははーん、コイツが今回のファイナル・ガール」だなと予想を立てるのを見越したように裏切って、驚きを与えてくれる作品もある。『X エックス』で最も性的魅力のない女性として描かれるのはロレインだが……と書いたが、良く考えたらロレイン(ジェナ・オルテガ)がある意味最もセクシーだった気がしないでもないので前言を撤回する。とはいえ、ファイナル・ガールとなるマキシーンが知的で注意深く、分別もあるとは思えないので、やはり撤回しない。
撤回がくるくるして話が進まないので戻すが、クローバーは物語が変遷するにつれて「視点」が変わることも指摘している。映画の始まりは「殺す側」の視点だが、暴力シーンでは「被害者」の視点になり、最後には「ファイナル・ガール」へ視点が移行する。観客は彼女と一緒に「生き残る」。この視点移動は、例を出さずともいくらでも想像していただけるだろう。
以上を踏まえて映画を見ると、また新しい視点が生まれるかもしれない「誰が死ぬんだ」とは不謹慎だが、映画ならば問題ない。不謹慎を思い切り楽しめるのも、映画の醍醐味である。
ファイナル・ガールのルールを無視するとどうなるか
ファイナル・ガールのルールを無視した場合、多くは駄作になってしまう。正確には「構造的にはファイナル・ガールが居なければ成立し得ないのに、こんなの面白いでしょとイキってルールから逸脱する」と、ホラー映画で「よしゃあいいのに」という行動を起こす奴と同じく、結果としてろくな事にならない。武士の情けでタイトルは出さぬでござるが、アレとかコレとか、どれだけ時間を無駄にしたか計り知れない。
ただ、ルールを破る、あるいは無視したことで、爆発的な効果を生む作品もある。4月7日に公開される『オオカミ狩り』は、その好例だろう。『オオカミ狩り』では、「コイツは死ぬな」と思った奴は5秒後に死ぬし、「こいつは中盤まで生き残るな」と感じた奴は2分で死ぬ。さらに「さすがにコイツは生き残るでしょ話的に」と判断した奴すら30分で死ぬ。
・[動画]極悪犯罪者たちがフィリピンから護送中に反乱!映画『オオカミ狩り』予告編
勢い宣伝みたいになってしまったが、ファイナル・ガールについて覚えておけば、上記作品もまた違った楽しみや驚きがある。もしあなたが女性なら、ルールを身に着けておけば、万が一の時に生き残れるかもしれない。筆者は男性なので、おそらく開始10分で死ぬ。ファイナル・ボーイは居ない。おそらく、地球最後の日にはファイナル・ガールが終末を見届けるだろう。(text:加藤広大/ライター)
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