原発事故の町に動物たちと住み続けた男はいま? 金平茂紀と中村真夕監督のトークイベント開催
金平「原発反対と口で言うのは簡単だが、これは出口の見えない人の叫びだ」
原発避難地域に住む男性を約10年に渡り追い続けたドキュメンタリー映画『劇場版 ナオト、いまもひとりっきり』。本作の公開を記念して初日、2月25日に中村真夕監督、2日目の26日にジャーナリストの金平茂紀と中村監督のトークイベントが開催された。
・国内メディアがタブー視、人の人生を金で解決しようとする不条理に抗う男が問いかけるものとは?
原発事故による全町避難で無人地帯となった福島県富岡町に、いまも人で暮らすナオトは、高度経済成長の裏側でカネに翻弄され続ける人生を送ってきた。原発事故後、人の人生を金で解決しようとする不条理、命を簡単に“処分”しようとする理不尽に納得できず、残った動物たちを世話しはじめた。
原発問題に終わりはない。汚染水はあふれかえり、ダダ漏れのように海上放出される。全国で原発再稼働の動きは、粛々と進められる。そんな私たちの矛盾の渦中で忘れ去られる福島で、ナオトは今、動物たちとどんな思いで暮らしているのか。ナオトの生きかたを見つめながら、私たちの今を考える。
・「おばさんのエロは気持ち悪い」に奮起、気鋭監督が“おばさん主人公”の映画を作った理由とは?
2月25日初日のトークイベントには、中村監督が登壇。前作から引き続き延べ10年に渡り映画を撮り続けた理由を、「2013年にオリンピック決定のニュースを聞いて、このままでは福島が忘れ去られると思った。人がおざなりにされた復興を伝えるにはオリンピック終了までを撮る必要がある」と語った。
2日目の26日には、ジャーナリストの金平と中村監督が登壇した。金平は「どこにも属さずフリーランスで、しかも当初はペーパードライバーでありながら10年もの間、現場(富岡町)に通い続けた。311直後や節目の時だけ震災地に来て取材して帰る記者とは違う、取材する姿勢が素晴らしい」と中村監督を称えた。
壇上で2人は、映画のラストでナオトが発した意外な発言に注目した。中村監督は「あの答えは予想していなかった。でもあの周辺では産業が原発しかないことは明らかだった」と驚きを隠さない。金平は「あの言葉の重みを考えた。原発事故によって一番ひどい思いをした人たちが、その答えを出すまでに追い込まれた。外部の人間が原発反対と口で言うのは簡単だが、あの発言は原発を肯定するものではなく、出口の見えない人の叫びだと思った」と感想を述べた。
中村監督はそれでも町でひとり暮らすナオトさんを「無人地帯の町で耐え忍んで生てているように描かれがちですが、この映画に登場するナオトさんは不思議と明るく生きていて、それは開き直りでもあるのだろうし、私は不思議なあの明るさに戸惑いもしたが、救われた」と語った。
『劇場版 ナオト、いまもひとりっきり』は公開中。
・[動画]福島第一原発事故で無人となった町に動物たちと住み続けた男のリアルドキュメント映画『劇場版 ナオト、いまもひとりっきり』予告編
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