【男達の遠吠え】『コミック雑誌なんかいらない!』前編
「恐縮です!」
サングラスに長髪、そしてつえをつきながら歩くその異様な存在感。芸能界のご意見番として毒を吐き、「ロックンロール!」で締めくくる。高畑裕太の強姦致傷容疑騒動時には、濡れ場に怖じ気づいて彼の主演作をクランクイン前日にドタキャンした母・高畑淳子への30年来の怒りも話題になった。また、別居中の妻で、女優の樹木希林とのつかず離れずの微妙な関係性は、もはやワイドショーの風物詩ともなっている。
しかし、そんなワイドショー的な知名度とは裏腹に、俳優・内田裕也への評価は思ったほど高くないというのが実情だ。だが、彼のフィルモグラフィーをひもといていくと、『嗚呼!おんなたち 猥歌(わいか) 』『水のないプール』『戦場のメリークリスマス』『十階のモスキート』『コミック雑誌なんかいらない!』『座頭市』、そしてハリウッド映画の『ブラック・レイン』など、特に1980年代の充実ぶりは特筆される。
本作のモチーフとなったのは、ロックバンド頭脳警察が発表した「コミック雑誌なんかいらない」(作詞・作曲:Pantax’s World)。その内容は、「俺にはコミック雑誌なんかいらない/俺のまわりはマンガだから」というものであり、テレビという世界の虚構性、不可思議さを徹底的に見つめた作品となっている。
そんな虚構の世界に、半端ない異物感臭を醸し出す内田。手に持つマイクもまるでナイフに見えるような殺気がそこにはある。(敬称略)
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