【映画を聴く】番外編「原田知世」前編
歌手としての分岐点は、デビュー10周年の時期!
9月23日にスタートしたNHKドラマ『運命に、似た恋』で、斎藤工との共演が話題になっている原田知世。同じNHK「ドラマ10」の枠で2014年に放送された『紙の月』では若い男のために銀行から1億円を横領するパートタイマーの主婦、昨年のTBSの単発ドラマ『三つの月』ではスランプの作曲家と恋に落ちる食堂の店主。そして今回の『運命に、似た恋』では斎藤工の演じる売れっ子デザイナーからのアプローチに戸惑いながらも惹かれていくクリーニング店勤務のシングルマザー。日々の暮らしはそれなりに充実しているけれど、どこか満たされないアラフォー女性、という役どころはどの作品にも共通している
もうすぐ49歳とは思えない“ナチュラル系美魔女”として宮沢りえや深津絵里、吉田羊らと同様に「美しすぎる」とか「かわいすぎる」と称賛されることの多い人だが、この3人と原田知世が違うのは、女優をやりながらコンスタントに音楽活動も続けていること。とりわけ90年代以降の、良き音楽的パートナーと組んで作られた作品群は、耳の肥えたポップス・ファンにも聴き継がれる質の高いものが多い。
ただし、この時期は“角川3人娘”のひとりとして、言ってみれば当てがわれた楽曲を淡々と歌っていたに過ぎず、そこから歌い手としての主張を見出すことは難しい。80年代後半には秋元康や後藤次利、元サザンオールスターズの大森隆志らと組んで新たな展開を模索していたりもするが、それらも特別マッチングがいいとは言えない。彼女が歌い手として自身の声の特性に自覚的になるのはデビュー10周年の92年、ムーンライダーズの鈴木慶一をプロデューサーに迎えてアルバム『GARDEN』を制作した時期あたりからである(後編へ続く…)。
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