(…前編「急逝から一年、“出火吐暴威”の性を超越した妖しい絡みに狂喜!」より続く)
【映画を聴く】『ジギー・スターダスト』/後編
日本にもフォロワーの多い彼の凄さがわかる作品
本作『ジギー・スターダスト』に収録されているハマースミス・オデオン劇場での公演が今も伝説としてファンに語り継がれているのは、そのパフォーマンスの素晴らしさだけでなく、ボウイが突如としてジギー・スターダストというペルソナの封印、つまりグラム・ロック・ブームの終息を自ら告げたからだ。アルバム『ジギー・スターダスト』の主人公を演じ続けることに飽き、次のフェーズへ移る必要性を感じていたボウイにとっての転換点であり、ブリティッシュ・ロック史上においても最もドラマティックな瞬間のひとつと言えるこのライヴがこうして映像で記録されていることの意味は、とてつもなく大きい。
この日のライヴはツアー最終日ということで、ロンドンのファンに熱狂的に迎え入れられている。先述のように、ボウイとスパイダーズ・フロム・マーズのコンビネーションは絶妙で、1年半のツアーの成果をはっきりと感じ取ることのできる仕上がりだ。ローリング・ストーンズの「夜をぶっとばせ」やヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」のカヴァーを織り交ぜながらステージは大詰めに向かう。そして最後の最後に用意された「ロックンロールの自殺者」を歌い出す直前、突然ボウイの口から発せられた「これが僕らの最後のショー」という言葉。その言葉の意味をうまく理解できずにただ騒然とする観客と、そのリアクションを気にせず最後の演奏を始めるボウイたちの間には、埋めがたい“時差”、もしくは“カルチャー・ギャップ”が横たわっていることを、見る者は知ることになる。
『ジギー・スターダスト』は1月14日より全国順次公開中。
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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