濡れ場への挑戦が名女優への第一歩? 性被害に遭ったことに気づけない暗示とシステムに変化の兆し

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Metoo
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早坂伸

米国で始まったMeToo運動、長らく日本で広がらなかった理由とは?

【日本映画界の問題点を探る/性被害は報道よりもはるかに多い 1】2017年にアメリカで起きたMeToo運動は、映画界の歴史を語るうえで、大きな転機となった。ハリウッドで最も成功したプロデューサーの1人とされていたハーヴェイ・ワインスタインの長年にわたるセクハラ行為が告発されると、世界中に衝撃が駆け巡った。その後、ハーヴェイは強姦や性的虐待などの容疑で逮捕され、数々の名作を生み出したワインスタイン・カンパニーも破産。現在では、映画界で絶大な権力を振りかざしていた頃の姿は影も形もなくなっている。

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この一連の出来事によって、これまで隠蔽されていたさまざまな事件が明らかとなり、我慢を強いられてきた被害者も声を上げられるような環境へと変化。俳優のケビン・スペイシーをはじめとするエンタメ界の大物たちの性加害も明らかとなり、次々と降板もしくは解雇、謝罪が相次いだ。一時は混乱も生じていたが、MeToo運動をきっかけに、性的なことに関わるシーンにはインティマシー・コーディネーターが導入されるなど、撮影現場の改善にも繋がったのは大きな進歩とも言えるだろう。

その後、映画界のみならず幅広い業界を巻き込むほどの大きなムーブメントになると、「#MeToo(私も被害者だ)」のハッシュタグキャンペーンが、アメリカを中心に世界中へと広がっていった。当然のことながら日本でもさまざまなニュースが報道されたが、他人事のように感じていた人も多かったのではないだろうか。しかしそれは、国内で同様のことが起きていなかったからではない。日本でもハリウッドと同じような性暴力が蔓延していたにもかかわらず、被害者が声を上げられる土壌が整っていなかったという問題点が挙げられる。事実、MeToo運動が始まった2017年にフリージャーナリストの伊藤詩織が性的暴行事件を訴えた際、被害者であるにも関わらず、彼女を誹謗中傷する投稿や記事が相次ぐ“炎上”の状態となり、彼女は深く傷ついたという。

「性暴力被害においては、たとえ一件でも多すぎる」党派を超えた思いが結実

これまで、映画界においては過激な濡れ場に挑戦することを「体当たり」として評価し、脱げることが“名女優へ第一歩”のようにみなす風潮があったことも声を上げにくくしていた原因の一つであったことは否めない。女優たちのなかには、自らの意志というよりも「売れるためには脱がなければいけない」というような一種の“暗示”をかけられていた人もいたのではないだろうか。実際、撮影時にヌードを強要されて拒否できなかったという女優が、後日、強要だったことを告発する事例が相次いでいる。それどころか、思い込みによって自身が被害を受けていたことにすら気が付いていない場合も少なくないはずだ。

監督らを告発する女優たちの声が、日本の状況を変えた

そんななか、日本で大きく流れが変わったのは2022年。俳優で映画監督の榊英雄による性暴力があったという複数の女優たちからの告発に始まり、園子温監督や俳優の木下ほうか等の性加害も報じられるなど、組織や業界の上位者らが立場の弱い者に卑劣な行為を強いてきた被害が次々と明るみとなって、日本映画界に激震が走る。一方で、仕事を失うことや二次被害の恐れから、声を上げにくいことにも、改めて気づかされた。それゆえに大半がMeToo運動や性暴力問題への言及を避けている状況だが、当初からこの問題について先陣を切って発信を続けている1人がカメラマンの早坂伸。騒動の発端となった榊監督作品『蜜月』と、同時期に製作された『ハザードランプ』のいずれでも撮影を担当していた。

早坂伸

『惡の華』や『架空OL日記』など数々の話題作でカメラマンを務めてきた早坂伸(右)

早坂は榊監督と長年に渡って仕事上の付き合いがあったが、「個人の間では何もなく、むしろ自分のことを立ててくれるほどだった」という。それだけ聞くと、榊監督とは良好な関係にあったようにも見える。では、そんな早坂が誰よりも厳しく榊監督を糾弾する現在の立場を取るようになったのは一体なぜか。ムビコレでは、その背景と心境の変化、そして自らのキャリアを犠牲にしてまでも闘おうと決意した理由について語ってもらった。4回にわたり掲載していく。(text:志村昌美

【性被害は報道よりもはるかに多い 2/性暴力問題を告発し続ける孤高の男〜】に続く(2023年4月29日掲載予定)

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