「BTS・ジミンに憧れ整形し死亡したカナダ人俳優」のニュースはデマだった? “存在しない人物”の可能性も
写真はAIが生成した画像だった 「Daily Mail」紙は記事を削除
韓国で活動していた22歳の俳優が美容整形手術を繰り返した末に合併症で亡くなったというニュースが先日報じられ、当欄でも伝えたが、これが精巧なデマであることが判明した。
・BTS ジミンになりたくて…12回整形手術受けたカナダの俳優が合併症で死亡
アメリカの業界誌「Variety」によると、24日(現地時間)にイギリスの「Daily Mail」紙電子版は、セイント・ヴォン・コルッチという22歳のカナダ人俳優が韓国の人気グループ「BTS」のジミンに似せようと美容整形を繰り返した後、合併症で亡くなったと報じたが、現在記事は削除されている。
このニュースは、英「The Independent」紙やゴシップサイト「TMZ」や韓国の主要なニュースメディアでも取り上げられた。実は2022年にイギリスのインフルエンサー、オリ・ロンドンがジミンに似せようと何度も手術を受けたことを明かしたことがあり、多くのメディアが偽情報を信じてしまったようだ。
発端は「The Hype Company PR」と名乗る団体から記者たちに直接送られた2つのプレスリリースで、コルッチが「韓国では常に自分の外見全体に不安を感じていた」「西洋人の特徴を差別されていると感じ、手術を受けるようになった」という内容だった。
最初のリリースは、22歳のコルッチが、新しい韓国ドラマのためにBTSのボーカル、ジミンに似せようと、20万ドルかけて手術を受けたとしていた。さらにコルッチは、ブラジルのスーパーモデル、アドリアナ・リマとヘッジファンドのCEO、ジョヴァニ・ラマスの息子であると書かれていた。だが、リマの長男は12歳であり、コルッチの父親とされるラマスや彼の会社IBGキャピタルもネット上では実在しない。
コルッチは音楽業界入りを目指して2019年に韓国へ来たとされているが、それから現在に至るまでの活動はなく、コルッチのものとされるSNSのアカウント(@papaxxzy)は、2月の更新を最後に投稿は止まっている。
「Variety」誌は「The Hype Company PR」にメールや電話で問い合わせたが回答はないという。多くのメディアが公式のものと判断したリリースに添えられたコルッチのものとされる写真はAIが生成した画像だという。
確かに第一報が出た際、セイント・ヴォン・コルッチが出演したとされる韓国ドラマについても、SNSアカウントも含めた本人についての情報もインターネット上に詳細なものはほとんどなかった。
ルッキズムや差別に苦しんだ若者の悲劇という一点に引きずられ、矛盾や疑問を精査しなかったことについて猛省し、今後は事実確認を徹底いたします。
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