GOT7パク・ジニョンは「2つの顔を表現できる俳優」だと思った
クリスマスの朝、無残な死体となって発見された双子の弟ウォル(パク・ジニョン)。闇バイトで稼ぐ荒っぽい兄のイル(パク・ジニョン)は、心優しく、知的障がいのあった弟を殺した真犯人に復讐するため、不良グループのメンバーを追って自ら少年院に入る。少年たちのいじめや暴力、指導教官による虐待が横行する地獄のような少年院で、イルは壮絶な闘いに挑むが、そこには哀しく残酷な真実が待ち受けていた——。
韓国アイドルグループGOT7のメンバーであり、近年は俳優としての活躍が目覚ましいパク・ジニョンが双子の兄弟イルとウォルの1人2役を演じ、第59回百想芸術大賞において男性新人演技賞を受賞したことや、兵役前最後の映画主演作となったことでも注目を集めている本作。監督を務めたキム・ソンスが、キャスティングの理由や本作への思いをインタビューで語った。
・パク・ジニョン、兵役前最後の映画主演作で“初恋記憶操作男子”から演技派俳優へ
監督:初めて会った日、パク・ジニョンさんは2つの顔を表現できる俳優だと思いました。映画やドラマ、またアイドルとしての彼は魅力あふれる善良な顔を主に見せてきましたが、実際に対面して感じ取れたのは、“鋭い眼差し”を持った俳優としての顔でした。この2つのイメージの間にギャップがあると感じ、俳優としてのパク・ジニョンさんが持っている互いに異なるレイヤーが、イルとウォルがもつ複雑で矛盾した面をうまく表現してくれると思ったんです。俳優は自分に与えられたキャラクターを演じるために、自分の性格や過去の経験から切り取ったものでキャラクター作りをするという話をよく聞きます。パク・ジニョンさんは「今まで穏やかに生きてきたことがコンプレックス」という方で、それを聞いたとき、はたして彼が自分と全く違うキャラクターをしっかり演じ切ることができるのだろうかという思いもありましたが、だからこそ典型的でない演技を見せてくれるのではという期待がありました。実際、パク・ジニョンさんが演じるイルとウォルの痛み、欠乏、憎悪、復讐心は、ありきたりではない表現で、私としても新鮮な感覚でした。キャラクターを作るときに意図したすべてが盛り込まれていながらも、ありきたりではない形。それがイルを典型的なキャラクターではなく、実際どこかに存在するような少年に思わせてくれました。
特にイルは弱い面と過激な面が共存し、ある時はとても人間味のある姿を見せますが、非人間的に感じられるほどの行動を見せたりもします。それゆえ実際に俳優を通してこのような矛盾したイルの両面性をうまく伝えられるのだろうか、という心配もありました。しかしパク・ジニョンさんの演技を目の当たりにした瞬間、イルの矛盾した両面が自然とひとつのキャラクターの中でつながり、実存する人物のように思わせてくれました。ウォルは知的障がいという設定もありますが、自分の感情を素直に表現できない人物なので、演じるのが難しいキャラクターです。実はウォルもまた複雑な感情を抱いています。イルにとって自分が頼れる存在になりたいという思いや、怒りや悲しみ、恐れ……様々な感情を持っていますが、それを思うように表現できず押し殺しているキャラクターです。ウォルが持っている障がいと立体的な感情の間でどちらに偏ることなく、その両方を上手く表現してくれたジニョンさんの演技はすばらしかった。大変だったはずですが、イルとウォルを絶妙に演じ分けてくれて、本当に良かったと思っています。
監督:この映画は決してアクション映画ではありません。劇中に登場する暴力の場面が快感を与える「アクション」に見えないことを望み、撮影現場でも「アクションシーン」とは言わず「私たちは今、暴力シーンを撮っている」と言い、暴力が見どころになったり、カッコよくて憧れるような行為に見えないよう気を配りました。観客の皆さんが「いけないこと」「人を傷つけること」として感じることを望みますし、不愉快なこの暴力が、今もこの世のどこかで行われているということを伝えたい。観客にその意図が伝わるよう、暴力が起こる瞬間ごとにイルにフォーカスする演出にしました。暴力そのものより、暴力的な状況を見ているイルの感情を見せようとしました。
イルもウォルも限られた時間と画面の中では見せ尽くすことができない、非常に複雑なキャラクターでした。だからこそパク・ジニョンさんとはたくさんの話を交わしました。2人の生まれた環境から家族関係、成長する中でウォルの障がいによりどんどん変わっていく2人の状況とそれに伴う感情、そして両親がいないなか、取り残されたイルとウォルの関係についても監督と俳優の考えが一致するまで、たくさんの議論を重ねました。特にウォルはただの「かわいそうな子」ではなく立体的で能動的な人物として存在させるために、ウォルは何を思っている人なのか、パク・ジニョンさんとたくさん話をしました。ウォルの微笑み、笑顔についても、ウォルは常に弱者であり、両親やイルに自分が負担を与えていることを苦しんでいたので、自分の感情を素直に伝えることができなかったはずです。怒ることも泣くことも、悔しいと言うこともできないウォルには他の選択肢がなく、彼にとってできることは結局、笑うことだったのだと思いました。パク・ジニョンさんは、どう笑うべきかについてもたくさん悩んでいました。監督にとっても俳優にとっても、あまりにも大変で難しいことではありましたが、私たちはその過程をとても楽しんでいたことを覚えています。そしてイルは、復讐心に埋もれていたときは感情を失っていても、映画が進むにつれ少しずつ感受性が敏感になり、様々な感情を抱くことになります。暴力に対する嫌悪と批判的な感情に気づき、ためらい、後悔もし、涙を見せたりもします。この過程こそ、モンスターだったイルが、人間性を回復していくオデッセイなのです。悲劇にもイルが人間性を回復すればするほど、少年院内でイルの立場は弱くなり、不利になります。このような瞬間が、イルの行動がもはや単純な復讐劇ではなくなる瞬間なのです。その瞬間のイルの感情はとても複雑ですが、パク・ジニョンさんはこの複雑なキャラクターの変化をとても繊細に表現してくれました。観客の皆さんも彼に感情移入し、より豊かになる感情や表情の変化を観察しながらストーリーを追っていくことがこの映画を楽しむポイントだと思います。
監督:『聖なる復讐者』が日本で公開されることをとても光栄に思います。この映画を作った俳優とスタッフの意図が日本の観客の皆さんに届くことを願っています。この映画を作ろうと決心させた1つのイメージを私は今でも忘れられません。1つの顔に2つの表情。怒りと敵意に満ちたイルの顔と、ぎこちない笑顔を浮かべるウォルの顔。同じような顔立ちですが、互いに相反する人生を語っているその顔が私をこの作品へと導きました。2人の少年は相反する表情を見せていますが、その2つの表情は、他の選択肢がない弱者、被害者、常に悔しい立場にいる人々の表情のようなものです。悪意を持って怒っていたり、気持ちを押し殺して笑顔を作ったりしているけれど、どちらも同じ胸が痛む表情であり、観客の皆さんとその「胸の痛み」について話したかったんです。
私たちが生きている世の中で、被害者はなぜ常にその立場になるしかないのか、加害者はなぜそんなにも簡単に免罪符を得られてしまうのか。韓国では、どこにいてもいくつもの十字架を見ることができます。それにもかかわらず本当に助けが必要な瞬間に、神にさえ見捨てられているような人たちがいます。世の中のすべてのアイロニーと矛盾と不条理を経験していて、出口さえ見つけられない人々はどのように救われるのでしょうか。この映画はウォルを忘れないでほしいという気持ちで作った作品です。ウォルとイルが皆さんの心の中でずっと生き続けていくこと、そして皆さんが世界各地にいるであろう“ウォル”に関心を持つきっかけになることを願っています。
・[動画]GOT7ジニョン、地獄のような少年院で亡き弟の復讐を果たせるか?映画『聖なる復讐者』予告編
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