他社がしり込みするような企画に挑む
チャレンジ精神や目利き力が光る
復縁のきざしが出てきたという報道もあるが、プライベートでは離婚問題に翻弄されているブラッド・ピット。だが、仕事は絶好調で、俳優業はもちろんだが、プロデューサーとして高い評価を得ている。
アカデミー賞作品賞に輝いた『ムーンライト』は、ピットがエグゼクティブ・プロデューサーに名を連ねている。本作は独立系映画会社「A24」とピットの製作会社「プランBエンターテインメント」の共同製作。実はプランBの製作作品はこれまでに、アカデミー賞で高い評価を得続けているのだ。
・『ムーンライト』、アカデミー賞作品賞は獲るべくして獲った賞だった
まず、『ディパーテッド』『それでも夜は明ける』が作品賞を受賞、『ツリー・オブ・ライフ』『グローリー/明日への行進』『マネー・ショート 華麗なる大逆転』が作品賞候補になっている。本作が3度目の作品賞受賞で、「アカデミー賞の常連」と呼べそうな活躍ぶりだ。余談だが、ピットがプロデューサーに名を連ねる『マネーボール』もノミネートされているが、プランBの製作ではない。
プランBの共同社長のガードナーとクライナーは、『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督の長編デビュー作『Medicine for Melancholy』(08年)を気に入り、ジェンキンス監督と次作のアイデアについて話し合ったが、製作にはいたらなかった。
しかし、13年にテリュライド映画祭で『それでも夜は明ける』がプレミア上映された際、3人は再会。その後、ジェンキンス監督がプランB側に『ムーンライト』の脚本を持ち込み、両者は契約。15年にA24も加わり、製作資金の調達が完了した。無名の黒人俳優3人が主演する本作の製作費は、ピットの名前がなければ集められなかったはずだ。他社がしり込みするような企画に挑むチャレンジ精神や目利き力が光る。
スターが自分の製作会社を作る目的は2つのタイプがある。1つは自分の主演作のため。自分に合う役を自ら企画立案すること。もう1つは自分の出演にはこだわらないタイプ。自ら興味のある題材や応援したい監督のプロデュースにあたる。ブランBは後者。アカデミー賞にからむ秀作のほか、『チャーリーとチョコレート工場』『キック・アス』『ワールド・ウォーZ』などの娯楽作も製作してきた。今後もピット主演作『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』やポン・ジュノ監督作『オクジャ』などが控えている。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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