荻上直子監督最新作にして、歴代最高の脚本と自負する絶望エンタテインメント
荻上直子監督オリジナル最新作にして、歴代最高の脚本と自負する絶望エンタテインメント映画『波紋』。本作のプレミア上映会舞台挨拶が5月15日に都内で行われ、主演の筒井真理子、共演の磯村勇斗、木野花、キムラ緑子、そして荻上直子監督が登壇した。
ベテラン実力派俳優陣によるヤバいキャラクター合戦が話題の本作。『かもめ食堂』(06年)『彼らが本気で編むときは、』(17年)『川っぺりムコリッタ』(21年)など優しいタッチの作風で知られる荻上監督だが、「これまでの作った作品からいい人だと勘違いされているけれど、私は意地悪で本当に嫌な奴です。その邪悪な部分を今回の作品にすべて詰め込みました」と新境地を宣言した。
主人公の須藤依子を演じた筒井は、「台本も素晴らしく、共演者も名優揃い。皆さんにゆらゆらとゆすってもらってリアクションをして受けていました」と回想した。
一方、依子の1人息子・拓哉役の磯村は、ベテラン女優陣に挟まれての登壇に「ずっと今日までソワソワしていました。自分1人挟まれてどういう風にしたらいいのだろうかと…」と恐縮し、「舞台袖で皆さんが盛り上がっていて、そのお話の中に入れなかった」と苦笑い。筒井から「アウェーな感じでしたね」と同情され、キムラから「私たちが『王子! 王子!』と言ったから。ごめんなさいね」と言われると、磯村は「恥ずかしくなって照れちゃいました」とお姉さま方の圧にタジタジだった。
そんな中、依子がパートタイムで働くスーパーの清掃係・水木役の木野は、磯村について「普通の役で何かをしているというわけではないのだけれど、素敵な方だと思った。佇まいが素敵。将来を期待しちゃいました」と絶賛。当の磯村は「背中に汗が…恥ずかしいです」と恐縮しきりだった。
依子が拠り所にしている新興宗教・緑命会のリーダーを演じたキムラは、「リーダー役は難しい。徳がないとやれない感じがして。私は徳もないし人にも慕われないから…」と告白。すると木野は「そんなことありません。緑子さんはいい人だと思った。いい人が滲んで騙しきれないところや踊るところなんて最高でした」と讃えた。
主演の筒井と木野は映像での共演は初というが、プライベートでは約30年の付き合いだという。木野は筒井について「若い頃は天然真理子と言われていてどうなることかと思ったけれど、ちゃんと頑張っていると思った。大人になっていて時間の流れをしみじみと感じました」と感慨深げ。
筒井は木野を「本当の恩人」と評し、「舞台の芝居で自信がなくなったときに、私が一番苦手とする怒る役をつけてくれた。本番中も稽古してくれて檄を飛ばしてくれて愛情を感じた。そして木野さんから『何か変わったね』と言われたときに、この仕事を続けてもいいんだと思った」と俳優人生の転機を与えてくれた人だと打ち明けた。
また、作品の内容にちなんで絶望の対処法を聞かれた筒井は、「嫌なことを朝まで引きずったら、布団の中で叫んで箱根に行って日帰り温泉」と回答。年長の木野は「ストレスを抱えたときに自分にかける呪文がある。それは“なるようにしかならない!”というもの。野望や野心を持ってしまうと、それが手に入らないときに絶望する。自分の思うようにならないから絶望する。なるようになると思えば絶望なんてない!」ともはや達観。キムラは「教祖だ!」、磯村は「セミナーのよう」と木野に手を合わせてその熱弁を聞き、舞台上と会場では大爆笑と拍手の渦が。
一方、キムラは「20年前くらいに絶望を味わい、己が悪いと自分を責め続け究極の孤独を味わった。9年くらいかけて徐々に忘れてやっと今の私になった」とヘビーな経験を回想。ベテラン勢の深すぎる人生訓を前に磯村は、「先輩方が凄すぎて、これ以上のエピソードはありません。自分の絶望はちっぽけ」と言葉を失い、そんな磯村に木野は「いい絶望を味わってください。1回か2回みんなきつい目に合うべき。だって若いって傲慢だから」とエールを送った。
金言炸裂の舞台挨拶もあっという間に終了の時間に。主演の筒井は“絶望を笑え”というキャッチコピーに触れて「ずっと我慢している方々に見ていただき、一緒に絶望を笑っていただきたい」とアピール。荻上監督も「顔合わせの本読みの段階で、これは狂った女たちの物語だと確信した。私の脚本以上のことを皆さん演じてくださって、本当に面白い映画になりました。見て笑っていただけたら嬉しいです」とリアクションに期待をした。
『波紋』は5月26日より劇場公開。
・[動画]筒井真理子、自分勝手な夫や息子・磯村勇斗に不気味な高笑い!『波紋』予告編
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