役所広司、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞に輝く! 『怪物』坂元裕二は最優秀脚本賞受賞
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役所広司は「僕は賞が大好きです。でも…」と切り出し会場沸かせる
第76回カンヌ国際映画祭が27日(現地時間)に閉幕、コンペティション部門で役所広司(『Perfect Days』)が最優秀男優賞、坂元裕二(『怪物』)が最優秀脚本賞に輝いた。
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ドイツの名匠、ヴィム・ヴェンダース監督が東京で撮影した『Perfect Days』は渋谷の公衆トイレ清掃員として働く男性の日常を描き、役所は単調に見える毎日のなかに喜びを見出す主人公・平山を演じた。公式上映後から絶賛され、受賞の呼び声が高まる中での下馬評通りの受賞となった。
名前を読み上げられると、ヴェンダース監督と顔を見合わせて笑顔になった役所は登壇すると「僕は賞が大好きです。でも、こんな華々しいカンヌ映画祭の場でスピーチするのはあんまり好きじゃない」と切り出し、客席を沸かせた。
プレゼンターのザーラ・アミール・エブラヒミ(『聖地には蜘蛛が巣を張る』)「男性は賞をもらうのが大好きだと知っています。時にはよくない理由で」という皮肉を効かせたコメントを受けてのジョークだったという。ちなみにアミール・エブラヒミは「今夜は作品に心身を捧げた素晴らしい俳優たちの1人が賞を受け取ります」と言葉を続けていた。
役所は穏やかな口調で映画祭や審査員、感謝を述べ、途中で「もうちょっと喋ってもいいかな」と言いながら、作品の関係者や妻など、1人1人に丁寧に感謝を示した。
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脚本賞を、すでに帰国していた坂元に代わって登壇した是枝監督は「ありがとうございます。一足早く日本に帰った坂元裕二さんにすぐ報告します」とまずコメント。
2018年12月に初めてプロットをもらい、「そこに描かれた2人の少年たちの姿をどのように映像にするか。あの少年2人を受け入れない世界の側にいる大人の一人として、自分自身が少年の目に見返えされる、そういう存在としてでしか、この作品に関わる誠実なスタンスを見つけられませんでした。なので、いただいた脚本の1ページ目に……それだけは僕の言葉なんですけども、“世界は生まれ変われるか”という一行を書きました。常にそのことを自分に問いながら、この作品に関わりました」と語り、スタッフ、キャストに向けて「みんなの力でこの賞をいただけたと思っております。ありがとうございました」と締め括った。
パルム・ドールは『Anatomie d’une chute』 女性監督としての受賞は3度目
最優秀賞のパルム・ドールはフランスのジュスティーヌ・トリエ監督の『Anatomie d’une chute(原題)』が受賞した。ジェーン・カンピオン(『ピアノ・レッスン』(93年)、一昨年に同賞受賞し、今年は審査委員を務めたジュリア・デュクルー監督(『TITANE/チタン』)に続いて女性監督として3度目の受賞となる。
同賞のプレゼンターを務め、83歳の今も映画やドラマに主演して活躍中のジェーン・フォンダは「私が初めてカンヌに来たのは1963年です。あなたがたの多くはまだ生まれていなかったでしょう」と切り出し、「そして当時はコンペティション部門に女性は1人もいませんでした。今年、女性監督が7人コンペティションに参加しています。これは歴史的です」と感慨深げに語った。
夫の不審死で疑惑の目を向けられた女性作家と、母の裁判を傍聴する視覚障害の息子を描く150分の大作を手がけたトリエ監督は受賞スピーチで、パートナーで本作の共同脚本家のアルチュール・アラリ監督(『ONODA 一万夜を越えて』)をはじめ、スタッフやキャストに感謝を述べ、最後に今年フランスで起きた年金改革抗議デモへの政府の対応への批判、さらに「政府が擁護する新自由主義的な文化の商業化は、フランスの文化的例外を壊そうとしていいます。この文化的例外な詩に、私は今日ここにはいません」と抗議を述べた。
グランプリを受賞したのは、映画祭前半の上映で批評家たちから高評を得ていたジョナサン・グレイザー監督の『The Zone of Interest(原題)』。アウシュビッツ強制収容所のすぐそばで幸せに暮らすナチ将校一家を描く。コンペ初参加で初受賞を果たしたグレイザー監督は、映画祭期間中に訃報が伝えられた受賞作の原作者、マーティン・エイミスを追悼した。
同賞のプレゼンターはクエンティン・タランティーノと現在97歳のアメリカ映画界のレジェンド、ロジャー・コーマンが務めた。
審査員グランプリに輝いたアキ・カウリスマキ監督は授賞式を欠席、代わりに主演俳優2人が登壇し、監督に託されたメッセージを伝えた。
監督賞に輝いたのは、30年前に『青いパパイアの香り』で新人監督賞に当たるカメラ・ドールを受賞したトラン・アン・ユン。受賞の喜びと、主演俳優のブノワ・マジメルとジュリエット・ビノシュを讃えた。
女優賞を受賞したメルヴェ・ディズダールはトルコ、フランス、ドイツ合作のヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の『About Dry Grasses(原題)』で、アナトリア西部を舞台に性的虐待容疑でキャリアを絶たれた教師を演じた。トルコ出身のディズダルはスピーチで「この国のこの地域で女性として生きるのがどのようなことか、私は理解しています。この賞を、この世界の困難を乗り越えて存在するために、希望を取り戻すために戦っているすべての女性に捧げます」と語った。(文:冨永由紀/映画ライター)
受賞結果は以下の通り。
パルム・ドール
『Anatomie d’une chute(原題)』/ジュスティーヌ・トリエ監督
グランプリ
『The Zone of Interest(原題)』/ジョナサン・グレイザー監督
審査員グランプリ
『Fallen Leaves(英題)』/アキ・カウリスマキ監督
監督賞
『La Passion de Dodin Bouffant(原題)』/トラン・アン・ユン監督
女優賞
メルヴェ・ディズダル(『Les Herbes seches(原題)』ヌリ・ビルゲ・ジェイラン)
男優賞
役所広司(『Perfect Days』/ヴィム・ヴェンダース監督)
脚本賞
坂元裕二(『怪物』/是枝裕和監督)
カメラ・ドール
『L’arbre aux papillons d’or(原題)』/ティエン・アン・ファム監督
短編パルムドール
『27(原題)』/フローラ・アンナ・ブダ監督
短編スペシャルメンション
『Fár(原題)』/Gunnur Martinsdóttir Schlüter
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