多くのリアルなストリート・キッズを路上で起用! その才能のきらめきに魅せられる

#映画を聴く

『ブランカとギター弾き』
(C)2015-ALL Rights Reserved Dorje Film
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【映画を聴く】『ブランカとギター弾き』前編
盲目のギター弾きもスラム街の住人

長谷井宏紀監督は、映像作家/写真家として世界を旅しながら作品を制作してきた人で、初の長編映画となる『ブランカとギター弾き』には、監督がこれまでの旅で得た“出会い”が宝石のように散りばめられている。物語の舞台は、自身と縁の深いフィリピンのマニラ。すべてのキャスト、すべてのロケーションに必然が感じられる、力強くて優しい長編デビュー作に仕上がっている。

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2012年、長谷井監督はオールフィリピンロケによる短編、『LUHA SA DESYERTO(砂漠の涙)』を完成させており、本作で盲目のギター弾きのピーターを演じているピーター・ミラリは、その作品にも出演している。実際にマニラの路上でギターを弾いて生活しているピーターを本作のために再び見つけ出すのは難しかったらしく、朝の9時から夜の7時まで、2ヵ月半毎日スラムを歩き回ったという。「彼と映画を作りたい」という監督の思いから企画が立ち上がり、脚本も彼を想定して書かれているだけあり、ピーターの存在は見る者に強烈な印象を残すに違いない。監督がピーターを見つけた時、彼はマニラから3時間半のところにある村に住んでいたという。

本作ではピーター以外にもスラムの路上から監督が見出したキャストが多いが、ピーターを慕う11歳の孤児、ブランカを演じるサイデル・ガブテロは、YouTubeに自分の歌をアップしているのを見つけたプロデューサーが、監督に推薦。直感で「この子しかいない」と監督は思ったという。本作に出演後はフィリピンでミュージカル『アニー』などにも出演しているようだ。

「お母さんをお金で買う」という目的のため、ピーターを連れ立って街を出たブランカが、ピーターに促されるままに「カリノサ」をたどたどしく歌い始めるシーンは、この物語の重要な転換点である。フィリピンではフォークダンスの曲として誰もが知っているというこの曲のメロディに、長谷井監督は自らオリジナルの歌詞をつけている。「ホーム」というタイトルのついたこの歌詞は、どうしようもなく悲惨な生活を強いられるブランカたちスラムの子どもたちが、それでもかすかな希望を糧に毎日を暮らす様子や、母を待ち続ける気持ちを描写。昔から歌い継がれるスタンダード曲のように劇中になじみ、この物語のテーマを代弁している。

後編「ヒロイン少女の荒削りな歌いっぷりに期待が高まる!」に続く…

『ブランカとギター弾き』は7月29日より全国公開中。