…中編「金髪の山田涼介に期待高まるも、ふたを開けてみると…」より続く
【元ネタ比較】『鋼の錬金術師』後編
え? これって遊園地のアトラクション映像!?
荒川弘原作による大ヒットコミック、「鋼の錬金術師」が実写映画化された。
チビと言われてキレるエドに扮する山田涼介は、筋肉質な体格もハマっていて期待通り。アルも、鎧姿の彼が実写で動いてるだけでファンとしては嬉しくなる。
彼らの幼なじみのウィンリィを演じる本田翼はポスターを見て期待できないと思っていたが、髪を金髪にしてもおらず、どうやっても本田翼にしか見えなかった。
その上で重要なキャラクターである焰の錬金術師でもあるマスタング大佐はディーン・フジオカが演じているのだが、彼は軟派な感じがするというか、軍人に見えない。『進撃の巨人』のときは賛否あったが、長谷川博己は軍人がサマになっていたぶんマシだったなぁと思う。ディーン・フジオカに限らず登場人物たちはみな、軍服デザインがカッコ良すぎるのかコスプレ感が否めない。
だが、それよりも違和感あるのはやっぱり世界観だ。イタリアでロケしたという町並みは確かにヨーロッパ風だが、CG処理を施したのかやけにキレイでまるでディズニーシーのよう。
町人も、用意されたこぎれいな“貧しい町人たちの衣装”に身を包んだ和製ヨーロッパ風姿で、ディズニーシーのキャストかミュージカル役者のよう。リアリティのない“作りました感”が半端ないのだ。
……と言いながらも、役者のコスプレも、ヨーロッパ風町並みも、まあいいよ。がんばってくれたよ。しかし、予想外だったのは実はこれらのことではないのだ。最も唖然とさせられたのは、見せどころである肝心要のVFXシーンなのだ!
なんというか、一言で言うと古い感じがする。錬金術で現れるクリーチャーのデザインなどはカッコいいし、おそらく技術的には最新のものなんだろうと思う。しかし、センスだよ、センス! 見せ方のセンスが、ずばり言ってダサいのだ。エルリック兄弟が母親を錬成しようとする竜巻のようなシーンにしても、エドが錬成陣を使わずに槍を錬成するシーンにしても、原作に忠実にしようとしたのかもしれないが、なんだかダサい。
このVFXがかっこいいとすべての不満が帳消しになるが、VFXがダサいためにすべてが台無しだ。監督は『ピンポン』で名を挙げた曽利文彦。考えてみたら『ピンポン』は2002年の作品だし、彼は2011年に『あしたのジョー』なんていうトンデモ映画も撮っていた。曽利文彦監督だからVFXは心配していなかったのだが。
ついでに言うと悪役の“ラスト”に扮する松雪泰子は肌のキメがない顔がCGのようで、別の意味で怖かった。最新VFXは彼女に一番注がれたのかもしれない。
総合すると、どこかダサくて“作りもの感”が出過ぎていて、テーマパークのアトラクション映像のような本作。『スター・ウォーズ』を見に行ったら、ディズニーランドのスターツアーズの映像を2時間見せられた気分だった。あれが悪いとは言わないが、やっぱり映画とは別物だし、こちらは映画を見るテンションで臨んでいるのだからして、勘弁してほしいと思ってしまうのも致しかたない。(文:小野田礼/ライター)
『鋼の錬金術師』は公開中。
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