【映画を聴く】2017年のベスト8/前編
素晴らしい映画、素晴らしい音楽がいつになく多く生まれた2017年。ここではその中からあえて「音楽映画じゃないけど実は音楽がいい映画」を8本ピックアップ。その聴きどころをご紹介したい。2018年もこの豊作が続きますように。
●『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』
どの作品でも音楽の使い方がフレッシュなソフィア・コッポラ監督だが、この作品ではほとんど音楽が使われていない。映像の彩度もぐっと抑えられ、いつものゴージャスかつガーリーな雰囲気は皆無と言っていい。しかしその分、劇中でたびたび歌われる南北戦争当時のアメリカのフォーク・ソング「Lorena」のメロディが鮮烈に見る者の耳に飛び込んでくる。音楽ファンが喜びそうなキラーチューンを選りすぐった『ロスト・イン・トランスレーション』や『マリー・アントワネット』の足し算的発想とは正反対のミニマリスト的なアプローチは、監督としての新境地と思わせる。
・初演は大失敗に終わった人気オペラ、ソフィア・コッポラはどう料理した?
●『アトミック・ブロンド』
シャーリーズ・セロンの命がけ&無敵すぎるアクションがとにかく話題になった『アトミック・ブロンド』は、ベルリンの壁崩壊という時代/舞台設定に合わせた選曲も絶妙。ニュー・オーダー、スージー&ザ・バンシーズ、ザ・クラッシュ、ディペッシュ・モードなど、楽曲はおもに80年代ものが多いが、中でも2016年に急逝したデヴィッド・ボウイとジョージ・マイケルの楽曲がフィーチャーされるシーンが印象深い。一時期、ベルリンを拠点に創作活動を行なっていたボウイの楽曲を映画の最初と最後に配し、ハードなアクションシーンのバックで「Father Figure」を甘美に聴かせるデヴィッド・リーチ監督のセンスは極めてDJ的で、彼の脳内プレイリストを聴いているかのような一貫した世界観がある。
●『ダンケルク』
劇中に絶え間なく鳴り続ける秒針の音は、クリストファー・ノーラン監督が実際に使っている腕時計の音をサンプリングしたものだという。ハンス・ジマーといえば、ハリウッドの大作を最大公約数的なスコアで無難にまとめる作曲家、というイメージを持たれがちだが、本作ではいつになく攻めの態勢が好印象だ。シーンによってスピードが目まぐるしく変わる秒針の音をメトロノームに見立て、そこにチェロやヴァイオリンの小刻みな反復フレーズが重なる。セリフのほとんどない本作にあって、タイムキーパー的な役割を果たしながら登場人物の緊張感も代弁するという、実はすごいことをやってのけている。
●『三度目の殺人』
・後編「優美さと怪物性を音楽で表現、1つの曲に着想を得た異色作…2017年の映画を音楽で斬る!」
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