【映画を聴く】『リバーズ・エッジ』前編
二階堂ふみが行定監督に直談判して実現!
青春漫画の金字塔として読み継がれる岡崎京子の『リバーズ・エッジ』が、発表から25年の歳月を経て映画化された。熱狂的&思い入れの深いファンが多いので、どうやっても何かしらの批判は避けらそうにないプロジェクトだが、行定勲監督ほかキャスト、スタッフの原作への愛と熱量が詰まった、現時点でこれ以上は望めないほど見応えのある一作に仕上がっている。
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いじめ、援助交際、ドラッグ、引きこもり、摂食障害、買い物依存、機能不全家族、動物虐待、あるいはLGBTなど、登場人物一人ひとりが抱える問題や秘密、作品全体に流れる虚無感や行き詰まり感はどれも2018年現在と恐ろしいほどシンクロしており、そこだけ取ってもこの作品が今の時代に映画化される意義は大きい。ただ、“余白”が言葉と同じぐらいの力を持つこの作品に特定の舞台や肉体が与えられることで、その“余白”が塗りつぶされてしまうのではないかーー。多くのファンが心配するのは、きっとそこだろう。岡崎作品としては比較的わかりやすいキャラクター造形やストーリー展開が用意された『ヘルタースケルター』とは、その点で実写化の難易度が別次元に思える。
本作の映画化は、もともと二階堂ふみが17歳の頃に持ち上がった話だという。しかしいろいろな面で折り合いがつかず、実現されないままに数年が経過。若草ハルナを演じられる年齢を過ぎてしまうことに焦りを感じた二階堂が、行定監督に直接アプローチすることでプロジェクトが動き始めたそうだ。行定監督もかねてからこの作品を“純文学”として愛読していたらしく、映画化の難しさを承知しながらも挑戦することを決めたという。
映画版『リバーズ・エッジ』を見てまず驚かされるのが、原作への忠実さだ。登場人物へのインタビューシーンなど、映画オリジナルの演出も加えられてはいるが、それらは原作の持つ“余白”をわかりやすく伝えるための手段でしかない。1996年5月に交通事故に遭って以来、新作を発表することなく療養生活を続けている岡崎京子は、(本人の意思とは関係なく)自身のイメージや過去の作品の評価を当時のまま“冷凍保存”することになった。映画版『リバーズ・エッジ』は、その魅力を損なうことなく“解凍”し、現代に蘇らせることに専心している。それは、原作をトレースするかのように書かれた瀬戸山美咲の脚本からも明らかだ。
・後編「すべてが必然だと感じられるオザケンと岡崎京子の組み合わせ」
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