誰もが憧れる“あの時代のニューヨーク”の香り! 映画好きならたまらないビタースウィートな物語

#映画を聴く

『さよなら、僕のマンハッタン』
4月14日より全国順次公開
(C)2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC
『さよなら、僕のマンハッタン』
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【映画を聴く】『さよなら、僕のマンハッタン』前編
象徴的に使われるサイモン&ガーファンクル

マーク・ウェブ監督の新作『さよなら、僕のマンハッタン』が日本公開された。いまや『アメイジング・スパイダーマン』シリーズや『gifted/ギフテッド』でおなじみの……と紹介されることが多いウェブ監督だが、今作は彼の映画デビュー作である『(500)日のサマー』が好きな人にこそ見てほしい、ひとりの青年のほろ苦い成長物語である。

[動画]マーク・ウェブ監督最新作は、名曲に乗せて送る、ほろ苦い青春の記憶/『さよなら、僕のマンハッタン』

LAを舞台に、ザ・スミスが好きなサエない会社員トムと同僚のサマーの恋の行方を描いた『(500)日のサマー』は、トムとサマーの煮え切らない関係性やサブカルチャーへの広範な目配せからウディ・アレン映画、特に『アニーホール』を連想せずにはいられない作品だったが、今作ではニューヨークを舞台に90年代ぐらいまでのアレン映画に出てきそうなロケーションを多用。誰もが憧れる“あの時代のニューヨーク”の香りを画面の隅々にまで漂わせている。

物語そのものは『アニーホール』というよりマイク・ニコルズ監督の『卒業』に近い。父の不倫相手と恋に落ちる作家志望のトーマスを演じるのは、イギリス出身のカラム・ターナー。当初は『セッション』のマイルズ・テラーが予定されていたらしいが、大人と少年の境界線に立たされたトーマスを、ターナーはほどよくセクシーな文学青年という感じで好演している。

『卒業』っぽさは、サイモン&ガーファンクルの曲が象徴的に使われるところにも感じられる。「ニューヨークの少年(The Only Living Boy in New York)」は、映画の原題にもなっている本作の主題歌と呼べる楽曲。歌詞の中でメキシコへ旅立つ友人のトムの幸運を願う「ぼく」とは、作者のポール・サイモン。映画『キャッチ22』の撮影のために遠く離れた相棒の「トム」ことアート・ガーファンクルに宛てた愛憎入り混じるメッセージ・ソングである。本作の主人公の名前はトーマス(=トム)だが、あらゆる意味でどん詰まり状態にある彼の境遇はむしろ「ぼく」ことポール・サイモンの立場で歌われる“The Only Living Boy in New York(ニューヨークでひとりぼっち)”という一節にこそよく表れている。

後編「さまざまな楽曲が有機的に物語とリンク! 深読みするのも楽しくなる映画」に続く…