磯村勇斗「覚悟を持つまでに時間がかかりました」障害者殺傷事件をモチーフに描く『月』出演への葛藤を振り返る
宮沢りえ&磯村勇斗らが公開記念舞台挨拶に登壇、本作への思い語る
実際の障害者殺傷事件をモチーフにした辺見庸による同名小説を映画化した衝撃作『月』。本作の公開記念舞台挨拶が、10月14日に新宿バルト9にて開催され、宮沢りえ、磯村勇斗、二階堂ふみ、オダギリジョーらキャスト4名と石井裕也監督が登壇した。
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本作は、『新聞記者』(19年)などで知られる映画会社スターサンズの故・河村光庸プロデューサーが生前「もっとも挑戦したかった題材」と情熱を傾けていた1本。
重度障害者施設で働く主人公・洋子を演じた宮沢は、「内容的には賛否両論ある作品になるだろうなと思いましたけど、ここから逃げたくないという気持ちが強く湧いたので参加しました。でも撮影中は河村さんという核がいなくなったので、やはりスタッフは混乱しましたが、その魂を引き継いで、絶対に作品にしたいという不思議な熱気に満ちていて。すごく背中を押されて演じることができたなと思っています」としみじみ。この日のキャスト、監督ともに、ただならぬ覚悟で参加したという熱い思いが口々に語られた。
また、実際に完成した作品について宮沢は「監督が本当に真剣に向き合ってかかれた台本は、最初にスッと読んだだけですぐに理解できるようなものではなくて。(自身が演じる)洋子が持っている葛藤とか不安とか、そういうものを情緒を乱して演じてほしいと監督から現場では言われていたので、映画を見て、情緒をかき乱して演じた時の、本当にもがいていた自分を思い出しました」と振り返る。
主人公・洋子の同僚で、正義感の強いさとくんを演じた磯村は、「企画書をいただいて。直感的に参加しないと駄目だなという思いはあったんですけど、それだけではやれないというか。覚悟を持つまでに時間がかかりましたし、それだけのエネルギーがある作品でもあり、役柄でもあったので、そこは慎重に監督と話し合いながら決めました」と述懐。
さらに完成した映画を見て「現場でつくっていくときには、キャスト陣もスタッフも同じ気持ちを持ちながら。この作品に対して責任を持ってつくったので。それは完成した作品に丁寧に映し出されていたのかなと思います。どこか平和ボケしてしまう現代ですが、その平和というのは危険と紙一重なところで生活しているのかなと。そういうことも感じ取れたので……言葉があまり出ないですが、そういう作品になったかなと思います」とかみ締めるようにコメントした。
同じく主人公・洋子の同僚で、作家を目指す陽子を演じた二階堂は、「わたしは事件が起こった当日のことを覚えていて。企画書をいただいたときに、社会的にも、その事件を受けたわれわれも昇華できていないものを作品にしていいのか、というのは正直すごく考えさせられたんですけど、みんなの関心が徐々に薄れてしまったり、考えるのをやめたりなってしまう時に、わたしたちは当事者として受け止めないといけないのではないか思い。社会に生きる当事者としてこの作品に参加して考えたいなと思いました」と本作のオファーを受けた時のことを振り返る。
そして主人公・洋子のことを「師匠」と呼ぶ夫の昌平を演じたオダギリは、「何より石井さんがこれに向き合ってつくろうという挑戦があるなら、そこにのらないわけにはいかないという気持ちで参加させていただきました」と述懐。
本作は、第28回釜山国際映画祭のジソク部門(Jiseok部門)にてワールドプレミア上映されたばかり。映画祭に参加した石井監督は、「いちばん驚いたのが若い女性がかなり反応していたということ。聞くところによると、韓国で#MeToo運動が高まった時に、弱者への目線の向け方が日本とはちょっと違うものがあって。特に障害者問題、福祉問題に対する関心がそもそも強いので、この作品に対してもまっすぐに向き合ってくれたなというのが印象に残りました」と振り返った。
それぞれの登壇者たちが、本作に向き合う覚悟をもって、正面からその思いを語り続けたこの日の舞台あいさつ。最後に宮沢が「日々生きていく中で、見たくないもの、聞きたくないもの、触れたくないものという箱が世の中にはゴロゴロとあって。そのふたを開けるのは勇気がいることだし、すごくエネルギーがいることだけど、そのふたを開けて向き合った時に、それはけっしてポジティブなものではないかもしれないですが、そういう中から考えるきっかけ、そのことについて話し合えるきっかけになるような映画であってほしいですし、皆さんの記憶にべったりとこびりつく作品として広がってほしいなと思います」とメッセージを伝えた。
Youtubeで公開された本作の予告編は、大きな反響を呼んでいる。コメント欄には「どういう作品であろうと誰かが『知る』きっかけになるのは大切だと思う 演じてくれた俳優さん女優さんには拍手です」「目を背けたい社会の闇 闇を演じた役者と作り上げたスタッフは凄いとしか言葉が出ない」「後世まで忘れられてはいけない事件を実力派俳優らで残すのはすごく良いことだと思う」と、難しいテーマに覚悟を持って挑んだキャスト&スタッフを讃える言葉が並ぶ。
『月』は現在公開中。
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