ドパルデューと親交の深い映画人らが強い非難を“憎悪の奔流”だとして抗議
十数名の女性から性的暴行などの加害で告発されたフランスの名優ジェラール・ドパルデューについて、映画監督や俳優など55名が彼を擁護する声明を「ル・フィガロ」紙に発表した。
・性暴力加害者に甘いフランス映画界に抗議…『燃ゆる女の肖像』のアデル・エネルが引退を表明
フランス映画の“とんでもない怪物(le monster sacré) “と呼ばれるドパルデューは、MeToo運動が起こった直後の2018年に22歳の俳優シャルロット・アルヌーからレイプで告発され、今年4月に新たに13人の女性が2004年から2022年にかけて性的暴力を受けたと証言する記事がニュースサイト「Mediapart」に掲載され、7月、9月、12月にも被害を訴える女性たちが現れた。フランス語の“とんでもない”にあたる“sacré”とは”聖なる(sacred)“という意味でもあるのが皮肉だ。
これを受けてフランスの公共放送は12月初旬、「La chute de l’ogre(原題/怪物の失墜の意)」と題するドキュメンタリーを放送したが、放送日当日に性的暴行を告発した俳優エマニュエル・ドゥべヴェールがパリのセーヌ川に飛び込み、自らの命を絶つという悲劇が起きた。
国内を中心にドパルデューへの非難の声が高まったが、強い非難を“憎悪の奔流”だとして抗議したのが、映画監督のパトリス・ルコントやベルトラン・ブリエ、俳優のナタリー・バイやシャーロット・ランプリング、ブノワ・ポールヴォールド、イヴァン・アタルといった映画人たちだ。
「私たちは芸術家であり、作家であり、映画プロデューサーです。その立場で私たちは表現しています。私たちは論争に巻き込まれたくありませんし、裁判所の仕事に任せます。ジェラール・ドパルデューは、おそらくすべての俳優の中で最も偉大な存在でしょう。映画界最後のとんでもない怪物です。彼に押し寄せるリンチの群衆を前にして、彼が映画界の巨人でなければ、他の誰もが受けたであろう推定無罪というものを無視して彼に注がれる憎悪の奔流を前にして、沈黙し続けることはできません」。
「ジェラール・ドパルデューがこのように攻撃されるとき、人々が攻撃しているのは芸術です。天才的な才能をもって、ジェラール・ドパルデューはわが国の芸樹的影響力に貢献しています。彼は最高の形で芸術の歴史に貢献しているのです。彼はこの芸術史の一部であり、この歴史を豊かなものにする貢献を続けていますこの点で、フランスは彼に負うところが大きい。映画と演劇は、彼のユニークな個性なしには成り立ちません」。
声明にはブノワ・ポールヴールド、かつてドパルデューのパートナーだったキャロル・ブーケ、ジャック・デュトロン、監督・脚本家のナディーヌ・トランティニャン、ジェラール・ダルモン、エマニュエル・セニエ、ピエール・リシャール、サルコジ元仏大統領夫人でもあるカーラ・ブルーニ、ブリジット・フォッセー、ヴァンサン・ペレーズ、イヴァン・アタル、クレマンティーヌ・セラリエ、アリエル・ドンバルらが名を連ねている。
フランスでは数日前にマクロン大統領もTVでドパルデューを擁護する発言をし、『隣の女』(80年)で共演したファニー・アルダンもドパルデューが法的に裁かれていない状況であることを指摘して「ジェラールに起きていることは死刑宣告と言えます」と語った。
ドパルデューは26日(現地時間)、フランスのラジオ局RTLの電話インタビューでコメントし、公開書簡はドパルデューの娘で俳優のジュリー・ドパルデューの友人の作家ヤニス・エジアドが執筆したと明かした。事前に送られた内容を読み「とても美しいと思ったので、公表していいと伝えました」と語った。
公開書簡の署名者にはドパルデューと仕事をしたことのある親交の深いベテランの名前が並ぶが、若い世代は見受けられない。
フランスでは今年、『燃ゆる女の肖像』(19年)の主演などで知られるアデル・エネルが性暴力加害者を守ろうとするフランス映画界に抗議して引退を表明した。
性加害についての認識、「作品に罪はない」とする考え方など、世代間のギャップは深いようだ。
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