錦戸亮が『コットンテール』で見せた演技をリリー・フランキーが称賛!「静かなお芝居にも何か思いを乗せられる人」
錦戸演じる慧が初めて父に自分の気持ちを曝け出す本編映像も公開
リリー・フランキー、錦戸亮らが出演し、第18回ローマ国際映画祭最優秀初長編作品賞を受賞した日英合作映画『コットンテール』。本作より、初日舞台挨拶のレポートと共に、錦戸演じる慧が初めて父・兼三郎に自分の気持ちを曝け出す本編映像を紹介する。
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公開初日に舞台挨拶が開催され、主演のリリー・フランキーと木村多江、高梨臨が登壇。日英の制作チームが一丸となった撮影、そしてイギリスのウィンダミア地方でのロケについてなど、たっぷりと語った。
コロナ禍で行われた、およそ2年半前の撮影から紆余曲折あり、いよいよ初日を迎えた本作。大勢の観客で埋まった超満員の客席を見渡したリリーは、「こんなにもたくさんの方に来ていただいて…。本当にこの映画はもっと小さな映画館でやるんだろうなと思っていたので、こんなに大きな映画館で初日を迎えることになるとは思っていなかった」と感激した様子。
さらに、「僕もいろいろと初日の舞台あいさつをしてきましたけど、今日は特に感慨深いですね。撮影してから2年半…、このパターンですとだいたいお蔵入りになってしまうことが多いんですけど(笑)。でもイギリスに先行して無事に日本で公開することができました。パトリック監督にも今日の満席の客席の様子を見せたいので、みんなで写真を撮りましょう」と客席に呼びかけた。
この日は、兼三郎の息子・慧を演じた錦戸亮は残念ながらスケジュールの都合により登壇はかなわなかったが、そんな錦戸との共演についてリリーは、「たぶん錦戸くんが演じる慧は、監督の分身だと思うんです。慧というのはいわゆるすごく常識的で、すごくいい子の役なんですけど、錦戸くんは本当に抑えた演技をしていて。お芝居をするのにとても難しい役柄だと思うんですが、そういう静かなお芝居にも何か思いを乗せられる人なので、錦戸くんを見ていて、お芝居にも影響があったように思います」と語ってみせる。
本作は家族の愛と再生について描き出している。そんな物語にちなんで、登壇者にとっての家族とはどのような存在なのか、という質問が投げられるひと幕も。そこでリリーが「僕は母親とふたりでいろんなところを転々としている感じだったんですよ。その後、東京に母を呼び寄せたわけです。福岡県出身なんですけど15歳の時から福岡にいないので、母親がいるところがふるさとという感じでした」と切り出す。
続けて「だから、夕方にお父さんがいて、お母さんがいて、兄弟がいて、という友だちの家に遊びに行くと、夕飯にお呼ばれすることもあるじゃないですか。僕はあれを見るたびに『うわ、テレビみたい!』と思ってしまうんです。だからそれぞれの家族の形があるし、自分は母親がいること、ということになるんですけど。今みたいに誰もいなくなると、なかなか家族というのは…」と思案しつつ、「どうですか?」と隣の高梨に話題を投げかけた。
その言葉を受けた高梨は、「わたしにとっては嫌われてもいいや、という存在ですね」とキッパリ。その言葉にリリーが「あなた、そんな気持ちだったら離縁を申し出られますよ!」とツッコんでみせて会場は大笑い。
そんな中、木村は「いろんな家族の形があると思うけど、自分の人生という物語の中で、つらいことや楽しいことの中に家族がいる。家族がいないと人生がつくられていかない。そんな存在だなと思っています。わたしは4人家族で、親戚もいますが、やはり父を失った時に、2度と戻ってこない当たり前の景色というのが、そういうものを届けてくれた存在でもあるんだなと思った」と述懐。
その上で「そこからまた家族が増えて、だんだんとわたしのまわりにいる人たちも家族のようになっていく。そういう人たちを少しでも増やしたいですね」という木村が語る家族観にホッコリと温かい雰囲気に包まれた会場内。その言葉を聞いたリリーも「なんかあそこ(木村の周辺)だけしあわせそうな感じで。俺らがカサカサな感じがしてきますよね」とツッコんでみせて、会場を沸かせた。
また、あわせて紹介する本編映像は、慧(錦戸)が初めて父・兼三郎(リリー)に自分の気持ちを曝け出す重要なシーン。明子(木村)の願いを叶えたい一心とはいえ、身勝手な行動をとる兼三郎に振り回される慧。英語教師として働きながら小説を執筆する兼三郎は、常に「自分の世界にいる」タイプの人間で、明子がいることでかろうじて繋がっていた父と息子の関係は完全に破綻する。
当初の予定を変更して1人でウィンダミア湖に向かった兼三郎に追いつき、激しい言い争いを繰り広げた夜、慧は初めて父に本当の気持ちを打ち明ける。本作は「母の介護と死」という監督自身の経験をもとにした物語で、慧が静かに涙を流しながら兼三郎に訴える「俺も、父さんの世界に入れて欲しかった」という言葉は、まさに監督が父に伝えたかった本心なのだろう。リリーは慧とのこのシーンについて、日本人の感覚ではなかなか出てこない、イギリス的なセリフだと評している。
最愛の妻を亡くした兼三郎と、最愛の母を亡くした慧。お互いに大きな喪失感を抱きながら、心の距離を近づけられない親子のもどかしさが胸を打つ。2人は明子の最後の願いを叶えることができるのか。そして、明子のもう一つの願いとは…。
『コットンテール』は現在公開中。
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