『RBG 最強の85才』
ポップアイコンにもなった法曹界のリベラル派
3月に公開された劇映画『ビリーブ 未来への大逆転』で若き日の活躍が描かれた、アメリカの最高裁判事、ルース・ベイダー・ギンズバーグ。80歳を過ぎた今も現役で活躍し続け、アメリカで最も尊敬される女性の1人である彼女を追ったドキュメンタリーだ。RBGはその名の頭文字で、ラッパーのノトーリアスB.I.G.に由来する愛称。サブタイトルに“最強の85才”とあるが、3月に86歳の誕生日を迎えている。
・アメリカで敬愛される最高齢の女性判事を熱く演じる/『ビリーブ〜』F・ジョーンズ インタビュー
今やアメリカのポップカルチャーのアイコンとなり、ロックスターのような人気者になっているのはなぜか? 家族や友人、知人の証言や本人へのインタビューでその人柄が明かされ、彼女の歩みを見ていくことでアメリカに男女平等の精神が徐々に定着していくステップも知ることができる。
とにかく魅力的な人物だ。彼女を知る人物は「無駄話をしない人」と言うが、本人は決してただの堅物ではなく、コメディアンにモノマネされるのを笑いながら見たり、ジムでトレーニングに励んだり、大好きなオペラを観るだけでなく出演もしたり、人生を楽しむことも忘れないエレガントな女性。そんな素顔を織り交ぜながら、母の教えである「淑女であれ、そして自立せよ」の通りに生きる姿、公の場でのスピーチや裁判の音声記録などから、法曹界のリベラル派としての功績を紐解いていく。
ロースクールで優秀な成績を修めながら、女性であることを理由に連邦高等裁判所やニューヨークの法律事務所などへの就職がかなわず、地区地方裁判所の助手からキャリアをスタートさせた彼女自身も理不尽な性差別を受けてきたのだが、そんな彼女を支え続けたのが、学生結婚をした弁護士の夫、マーティン・D・ギンズバーグだ。「夫との出会いは人生で一番の幸運」とRBGが語る通り、妻の才能を誰よりも早く認めてサポートしたマーティンの存在なしにRBGの功績は語れない。自分よりも妻のキャリアを優先し、家事もこなし、二児をもうけた夫は2010年に亡くなったが、生前のフッテージからはウィットに富み、愛情深い人柄が存分に伝わってくる。
『RBG 最強の85才』は5月10日より公開中。
冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。
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