映画祭初!グランプリはアフリカ系女性監督
25日(現地時間)、第72回カンヌ国際映画祭の授賞式が行われ、最高賞のパルムドールを韓国のポン・ジュノ監督の『Parasite(英題)』が受賞した。昨年の『万引き家族』(是枝裕和監督)に続いて、2年連続でアジアの監督作品が最高賞に輝いた。
・『万引き家族』だけは別! パルムドールはヒットに繋がらないが是枝作品は例外
韓国映画として初のパルムドールを受賞した『Parasite』は、家族全員が無職で底辺の生活を送っている一家を中心にしたスリラー。長男が裕福なIT企業経営者の家に家庭教師として雇われたことから、思わぬ展開が繰り広げられていく。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は審査員満場一致で受賞が決定したと記者会見で語った。「とてもユニークで、想像もつかない作品だった「様々なジャンルが交錯し、ユーモラスで偏見なしに社会の緊急課題を描いている。とてもローカルな映画なのにグローバルな作品だ。作品を見た時から魅了され、その思いはどんどん増していった」と選定について説明した。
最高賞に次ぐ賞にあたるグランプリは、マティ・ディオップ監督の『Atlantique(原題)』(フランス、セネガル)が受賞した。ディオップはミュージシャンのワシス・ディオップの娘でセネガルの映画監督、故ジブリル・ディオップ・マンベティの姪。女優としてもクレール・ドゥニ監督の『35杯のラムショット』などに出演している。アフリカ系の女性監督受賞は映画祭初。しかも長編デビュー作で受賞という快挙だ。
審査員賞は2作が受賞。ラディ・リ監督の『Les Miserables(原題)』(フランス)とクレベル・メンドサ・フィロ&フリアノ・ドルネレス監督の『Bacurau(原題)』(ブラジル)が受賞した。パリ郊外を舞台にした犯罪バイオレンスの前者、近未来のブラジルの小都市を舞台にした後者も、ジャンル映画の形で社会問題に迫っている。
監督賞は『Le Jeune Ahmed(原題)』(ベルギー、フランス)のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟。現代のベルギーに暮らす13歳のアフメド少年が、イスラム教徒としての理想と現実の生活との間で苦悩する姿を描いた。
男優賞はペドロ・アルモドバル監督の自伝的作品『Dolor Gloria(原題)』(スペイン)に主演したアントニオ・バンデラス。40年の付き合いになるというアルモドバル監督自身をモデルにしたというスランプに苦しむ映画監督を演じた。受賞スピーチでバンデラスは「彼を尊敬しています。敬愛しています。大好きです。私の師であり、私の人生に多くを与えてくれました。ですから、この賞を彼に捧げます」とアルモドバルへの感謝を語った。
公式な受賞ではないが、イスラエル・ナザレ出身のパレスチナ系であるエリア・スレイマン監督の『It Must be Heaven(原題)』(フランス、カナダ)がスペシャル・メンションを獲得した。
なお、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットを主演に迎えて1969年のハリウッドを描いたクエンティン・タランティーノ監督の最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は惜しくも受賞を逃したが、作品中で印象に残る名演をした犬に贈られる「パルム・ドッグ」を本作に登場したピットブルのブランディが受賞。ブラッド・ピット演じる主人公のペット役だ。授賞式前日に、代理で受賞したタランティーノは「ずっと言っていたんだ。パルムドールを獲れるかわからないけど、パルムドッグ受賞はいけそうだってね」と語っていた。
パルムドール:『Parasite(英題)』 (韓国)
グランプリ:『Atlantique(原題)』(フランス、セネガル、ベルギー)
監督賞:ジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ(『Le Jeune Ahmed(原題)』)(ベルギー、フランス)
審査員賞:『Les Miserables(原題)』『Bacurau(原題)』(フランス)
男優賞:アントニオ・バンデラス(『Dolor Gloria(原題)』(スペイン)
女優賞:エミリー・ビーチャム(『Little Joe(原題)』(オーストラリア、イギリス、ドイツ)
脚本賞:セリーヌ・シアマ(『Portrait de la fille en feu(原題)』)(フランス)
短編パルムドール:『THE DISTANCE BETWEEN US AND THE SKY(原題)』(ギリシャ、フランス)
カメラ・ドール(新人賞):セサル・ディアス(『Nuestras Madres(原題)』グアテマラ、ベルギー、フランス)
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