興収が右肩上がりの『ジョン・ウィック』シリーズ!『ミッション』『ボーン』に並ぶ人気コンテンツに

#キアヌ・リーヴス#興行トレンド#ジョン・ウィック:パラベラム

『ジョン・ウィック:パラベラム』
(R),TM & (C)2019 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved
『ジョン・ウィック:パラベラム』
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全米で公開中の『ジョン・ウィック:パラベラム』が大ヒットしている。5月17日から公開され、6月2日までに上げた興収は1億2600万ドルでシリーズ最高を更新した。1作目(14年)が4300万ドル、2作目(17年)が9200万ドルと回を重ねるごとに興収を伸ばしており、人気の裾野を広げてきた。

意外に戦略家? 『ジョン・ウィック』で復活を遂げたキアヌ・リーヴスの変遷

人気スター主演のアクションシリーズといえば、トム・クルーズの『ミッション:インポッシブル』シリーズやマット・デイモンの『ボーン』シリーズなどがある。直近のシリーズの全米興収を見ると、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(18年)が2億2000万ドル、『ジェイソン・ボーン』(16年)が1億6200万ドル。『ジョン・ウィック:パラベラム』は最終的に両作に迫る興収を上げるものと予想され、肩を並べる人気シリーズに成長したといえる。

人気の秘密はキアヌ・リーヴス演じるジョンの超絶アクションの数々だ。彼の必殺技は「ガンフー」で、敵と接近した状態での銃撃戦(ガン)とカンフーを融合させた格闘術。拳銃を持ちながら敵にカンフーで攻撃したり、投げ飛ばしつつ、すきを見て銃撃し抹殺する。数多くの敵を拳銃やライフル、時にはナイフを使って倒していく。ジョンが身に着けるオーダーメイドのスーツは防弾仕様の特殊生地だ。新作ではバイクに乗りながら敵を刀で切りつける場面もある。

シリーズを監督するチャド・スタエルスキは、『マトリックス/リローデッド』『エクスペンダブルズ』などのアクション映画でスタント・コーディネーターを務めてきた「アクション映画の達人」。アクションを丁寧に映すロング・ショットや、アクションの連続性を損なわないカット割りでキアヌのガンフーをスピーディーに、かつスタイリッシュに描いている。

大半のスタントをキアヌ自身が行っているのもポイントだ。役作りのために数ヵ月間に渡り柔術や射撃、ドライビングのトレーニングをこなしている。

3作目で人気シリーズの仲間入りを果たした『ジョン・ウィック』だが、1作目の興収4300万ドルは並の興行成績。続編が作られるほどの大ヒットではない。なぜシリーズ化されたのか。2つの要因が考えられる。

1つは製作費を抑えたこと。IMDB.comの推定では、1作目は2000万ドル。アクション大作となると製作費が1億ドルを超えることも多いハリウッド映画の中では低い金額だ。この低予算なら全米興収が4300万ドルでも収益が出たものと推測され、続編にゴーサインが出たのだろう。製作費は2作目が4000万ドル、3作目が5500万ドルと増えているものの、興収も伸びているので黒字になっているものと推測される。

もう1つは、製作・配給元のライオンズゲートにヒットシリーズがなかったこと。『ハンガーゲーム』『ダイバージェント』とヤングアダルト小説の映画化でヒットを飛ばした同社だが、両作以降はヒットシリーズと呼べるものがない。そこでポテンシャルのあった『ジョン・ウィック』を2〜3年ごとに製作してヒットシリーズに育てた。

ライオンズゲートでは『ジョン・ウィック』4作目を21年に公開すると発表した。伝説の殺し屋に扮したキアヌの活躍は引き続き見られそうだ。

『ジョン・ウィック:パラベラム』は10月より日本公開される。(文:相良智弘/フリーライター)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。