【映画を聴く】『ハーツ・ビート・ラウド』前編
父と娘の、未来への手探り描く
NYはブルックリンの、閑散としたレコードショップ。カウンターでヘッドホンをしてYouTubeを見る50代ぐらいのヒゲ面の店主。タバコをくわえて火をつけたところで客から「店内でタバコはダメだろ」と注意されるも、「買ってくれるなら消すよ」と悪びれる様子はない。客は手にしていたRadioheadのアナログレコードーー9作目のアルバム『A MOON SHAPED POOL』だーーをエサ箱(陳列棚)に戻し、スマホをいじり出す。そして「ネットでここより安く買ったぜ。ざまあ見ろ」と捨てゼリフを吐き、店をあとにする。
場面は変わり、とある学校で講義を受ける少女。たぶんさっきのレコード屋のオヤジの娘だということは、見ていれば察しがつく。彼女は冠動脈疾患の症状について先生に質問され、「胸の痛み」と答える。別の学生からは「動悸(Hearts Beat Loud)」という言葉も出てくる。やる気のない父親とは逆に、彼女は医学の道を志す、勉強熱心な学生のようだ。
ちなみに、冒頭のシークエンスで父親が見入っていたYouTubeの動画は、Wilcoのジェフ・トゥイーディーが息子のスペンサーと組んだバンド、Tweedyによる「Summer Noon」という楽曲の演奏だ。親子でバンドを組むのが夢というフランクは、勉強するサムをいつものように強引にセッションに誘う。そしてサムがノートに書きつけた「Hearts Beat Loud」というフレーズからイメージを広げ、二人で同名の楽曲のデモテープを制作する。そしてサムの「私たちはバンドじゃないわよ」という言葉そのままに、We’re Not a Bandというバンド名をでっち上げ、定額制音楽ストリーミングサービスのSpotifyに楽曲をアップロードしてしまう。
ストリーミングの普及が遅れ気味と言われる日本だが、ここ1〜2年で「サブスク」(サブスクリプション=定額制)という言葉が浸透し、その最大手であるSpotifyユーザーも着実に増えている。4000万曲以上の楽曲を自由に呼び出してスマホやワイヤレススピーカーで聴けるだけでなく、自分の好きな楽曲をまとめたプレイリストを作成してシェアすることもできるという、まさにSNS時代の音楽リスニングを体現するようなサービスだ。
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