(…中編「高校生はトラウマ抱え、大学生は三角関係…切ない物語にキュンキュン」より続く
映像ならではの音楽表現に期待高まる
【元ネタ比較】『ギヴン』後編
フジテレビの人気の深夜アニメ枠「ノイタミナ」で放送中のBLコミック原作の『ギヴン』。ハンドを組む男の子たちの恋愛と成長を描いた青春音楽ストーリーだ。
当然のことながら、音に関してはマンガでは想像することしかできないが、アニメでは作品上で重要な音を表現することができる。その音楽や声を実際に聞くことができるのだ。
アニメ1話で放送されたカッティングの効いた立夏のギターは確かに高校生らしくはなく、肩の力の抜け具合が大人っぽい。劇中曲ではないが、オープニングテーマはロック調の激しい曲で意表をつかれた。もっとオルタナ系のおとなしめの曲を予想していたのだけれども。
アニメシリーズ第2話ではいよいよもって作品のキーとなる真冬の歌声が披露された。立夏が一瞬にして魅了されるというか恋に落ちるというか、“もっていかれてしまう”という表現がぴったりくる真冬の歌声だ。
ここで気になるのは声優のキャスティングだろう。ところで、BLコミックはドラマCD化されることが多く、それが人気のバロメーターにもなっていて『ギヴン』もご多分に漏れずにドラマCD化されている。
そして、注目したいのはここからなのだが、アニメ化される場合に通常はドラマCDのキャストと同じ布陣で挑むものなのに、『ギヴン』のキャストはドラマCDとアニメ版ではメインキャストが総入れ替えされているのだ。
なぜ『ギヴン』に限って声優が違うのか、何かしら大人の事情というものが働いたのかは実際のところはわからない。
対して矢野奨吾は出演本数は声優としては多い方ではない。出世作はアニメ化もされたソーシャルゲームの「アイマス」こと『アイドルマスター』シリーズの『アイドルマスター Side M』の岡村直央役だろう。
岡村直央は元子役の小学生アイドルで、声はもちろん幼いショタ声。アニメ版『ギヴン』の冒頭は真冬のシーンで真冬のモノローグが流れ、真冬の声はショタ声とまではいかないが、ずいぶんとかわいい声だなぁという第一印象だった。ちょっと違和感も覚えたくらいに感じたが、それでも起用されたのには訳があるんじゃないだろうか。
矢野奨吾はアニメの出演本数こそ多くはないが、「アイマス」などアイドルのゲームは歌が上手くないと起用されないし、歌に定評がある声優だ。原作で「ハスキーで綺麗め」と表現される真冬の奇跡的な歌声を聴かせてくれるのだろうか? と期待が高まっていた。
第2話では、真冬が立夏の前でアカペラで歌を口ずさみ、立夏が“もっていかれる”シーンが放送された。真冬のその声は、甘いけどショタ声ではなくて切なさをはらんでいて、ちょっとだけハスキーでゾクッとさせるものだった。エンディングでは1話目ではピアノのみバージョンだったが、2話目のエンディングでは矢野奨吾の歌入りバージョンが流れ、そちらも甘さと切なさと透明感があってエモーショナルなナンバーだ。真冬の歌声が恋愛もバンドも引き金となってストーリーが動き出してゆくこの作品に、矢野奨吾の声は説得力を持たせるだけのことはあったと思う。
今後は真冬が天才的な音楽の才能を開花させ、バンドも成長していくが、アニメ版ではどこまで描くのだろうか。真冬の過去、立夏と真冬の恋愛も匂わせるだけでなくしっかりと描いて欲しい。大学生組の三角関係については描くのだろうか? 個人的にはヘタレ好きなので優しくてお人好しなベースの春樹推しなものだから、大学生組の恋愛模様も追っていって欲しいところだ。
『ギヴン』のストーリーとしても、「ノイタミナ」が初めて挑んだBLをどこまで描くのかという意味でも、今後の展開を最後まで見届けたいと思う。
ちなみにもうひとつ。『ギヴン』で流れるテレビCMで今冬公開予定の大人気BLコミックの劇場アニメ化『囀る鳥は羽ばたかない』の予告編が流れ、それもまたネットで話題となっていた。BL作品がどんどんメジャーな土俵に上がっていくことは、ドキドキすると同時にワクワクすることでもある。(文:矢野絢子/ライター)
『ギヴン』はフジテレビ「ノイタミナ」他にて放送中。
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