【映画を聴く】『ロケットマン』前編
わずか10分で生まれた名曲
『ロケットマン』は、エルトン・ジョンと彼の楽曲制作のパートナーであるバーニー・トーピンの「友情」を主軸としたミュージカル映画である。今年でデビュー50周年を迎えるエルトン・ジョンは、いまさら説明する必要のないヒットメーカーでありスーパースターだが、自分でほとんど歌詞を書かないという事実は意外なほど知られていない。
・ 孤独な少年が唯一無二の存在になっていく姿がドラマティック!
「Your Song(僕の歌は君の歌)」も「Crocodile Rock」も「Goodbye Yellow Brick Road」も「Candle in the Wind(キャンドル・イン・ザ・ウインド〜ダイアナ元英皇太子妃に捧ぐ)」も、すべてはバーニーの書いた歌詞にエルトンがピアノでメロディをつけて完成させたものだ。自分で歌詞を書かない歌手/作曲家自体は特に珍しくないが、半世紀にわたってほぼ専属という形で同じ作詞家と組み続けている人となると、エルトン以外にはそう思いつかない。
冒頭に「友情」とカギ括弧つきで書いたのは、2人の関係性が普通の意味の友情とはあまりにも異なるからだ。バイセクシャルのエルトンと、ヘテロセクシャルのバーニー。17歳のバーニーの詞を書く才能に惚れ込んだ20歳のエルトンは、ほどなくバーニーに恋愛感情を抱くようになる。しかしエルトンの気持ちに男性として応えることができないバーニーは、作詞家として自身の思いエルトンに伝えようとする。
「曲は書けるけど詞が書けない」エルトンが、『NME』誌のミュージシャン募集欄に載ったリバティ・レコーズの告知に応募し、そこで「詞は書けるけど曲が書けない」バーニーを紹介されたのが1967年。劇中でも描かれているように、70年代にはお互いから距離を置き、それぞれ他者とのコラボレーションを経験した時期もあったものの、現在に至るまで<作詞:バーニー・トーピン/作曲:エルトン・ジョン>という分業スタイルを変えることなく両者のパートナーシップは続いている(後編へ続く…)。
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