柴咲コウと黒沢清監督、海外メディアに向けて『蛇の道』をアピール
黒沢清監督が98年公開の自作をフランスを舞台にセルフリメイクしたリベンジ・サスペンス『蛇の道』。本作の公開に先駆け、6月5日に日本外国特派員協会上映&記者会見が開催され、主演の柴咲コウと黒沢監督が登壇。日本人監督が手がける“フランス映画”となった本作について、成り立ちや日本とフランスの製作現場の違いについて語り、新作の魅力を海外メディアに向けてアピールした。
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主演の柴咲コウと初タッグを組んだ黒沢監督の最新作『蛇の道』は、全編フランスで撮影され、日本生まれの“フランス映画”として新たにスクリーンに蘇る。海外メディアも多く待ち構える中、柴咲と黒沢監督が登壇した。
まず柴咲は「作品を携えてこの場にいられることを光栄に思います。そして、黒沢監督と一緒にお仕事ができて嬉しく思っています。今日はフランス語で自己紹介しようと思ったのですが、現時点ではフランス語ができなくて、ごめんなさい。みなさんに映画を楽しんでいただけたら嬉しいです」と流ちょうな英語で挨拶。
すると黒沢監督は「柴咲さんがこんなに英語が上手だとは!」と驚いた様子で、「公開を間近に控えた今、このように柴咲さんと一緒に海外の方とお話しできて光栄です」と感謝を込め挨拶した。
はじめに、自作をリメイクすることになった経緯や制作の過程について問われた黒沢監督は、「フランスの制作会社プロデューサーからリメイクのオファーがありまして、真っ先に『蛇の道』をやりたいと答えました。リメイク版では、主人公を女性にすることで、オリジナルとはまた違った要素が加わったと思います。主演をやってくれる人がいるのだろうかと不安でしたが、柴咲さんに声をかけ、出演いただけることになり、やったー!という気持ちでした」と解説した。
柴咲は「黒沢監督から声がかかると思っていなかったので嬉しくて。フランスにも行けるということで不純な動機で引き受けました」と出演を即決した理由を冗談を交えて語り、とくに脚本に惹かれ、全くの新しい作品として取り組んだことを明かした。
ここから会場に集まった海外メディアの記者とトークセッションとなった。娘を殺された男の復讐に協力する一方で、心療内科医として日常を送る小夜子。黒沢監督は「小夜子が自宅でどう過ごしていればいいのかというのは悩みましたね。そこで思いついたのが“何もしていない”ということ。次に、“ルンバをみつめている”。これは我ながらすごいことを思いついたと。幸いフランスにもルンバがあったのでよかったです」と、小夜子の人物像を掘り下げる意外なエピソードを明かした。
言語の面ではスタッフとのコミュニケーションで苦労もあったという柴咲は、「10年フランスで過ごしている女性を違和感なく演じるのには苦労しました。撮影の後半では段々とフランス語で話すスタッフの会話も理解できるようになり成長を感じられたのは楽しかったです」と、自身の殻を破り挑戦することに意味があったと力強く語った。
日本とフランスでは制作現場の雰囲気も全く違うとのこと。柴咲は「フランスは居心地がいい。議論ができて、仕事がしやすいと思いました」と感想を述べた。
黒沢監督もフランスは肌に合うといい、「日本人より気持ちのいい面はありますね。たとえば、今日は妻と演劇に行くから仕事を早く切り上げ帰りたいんだというスタッフがいると、周りの人はそれを受け入れる。日本ではなかなかないことだと思います」と語った。
また、滅多に自作を振り返ることはないという黒沢監督が、今回オリジナル版を唯一振り返って確認したシーンがあるそうで、「拉致した人間の鎖の長さは見直して確認しました」と、オリジナル版を彷彿とさせる拷問シーンの裏側も明かした。
『蛇の道』は6月14日より全国公開。
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