かつて少年たちが熱狂したお色気コメディ『青い体験』
1970年代に思春期真っ盛りの少年時代を過ごした世代に絶大な人気を誇る伝説的お色気コメディがある。1973年製作のイタリア映画『青い体験』 (日本公開は1974年) だ。ネットのレビューには、「懐かしい!」「最高」「エロい」などと“かつての少年たち”の絶賛コメントがズラリと並ぶ。一体何がそんなにすごいのか。一体どのくらいエロイのか。女性目線で紐解いてみるのも一興だろう。
・謎のセクシーアイテムに目が釘付け! 大胆さ増す女に男は…。エロティック恋愛映画の続編を解説
舞台はイタリアのシシリー島の小さな町。生地商を営むイグナツィオは、突然妻を亡くして男やもめになってしまった。だがあまり悲しむ様子は見られず、むしろ口うるさい妻が逝ってくれてせいせいしたといった感じさえある。
イグナツィオには、アントニオ、ニーノ、エンツィノの3人の息子がいる。末っ子のエンツィノはおもちゃで遊ぶのに夢中な年頃だが、上の2人は頭の中がエッチな妄想でいっぱいの10代の少年である。父親同様、息子たちも母親が死んでしょげている湿っぽい様子はあまりなく、なんだかカラリとしている。次男のニーノに至っては、母親を墓地に埋葬後、同じ車に乗り合わせた参列者の肉感的未亡人の太ももに手を這わせる始末である。
そんな頭の中がピンク色の少年を含む男所帯に若くて美人の家政婦がやって来るのだから、一波乱起きない方がおかしい。一家が葬儀から家に戻ってみると、妻が生前依頼していたという美しい家政婦アンジェラがいたのである。
ラウラ・アントネッリの妖艶な魅力! 見えそうで見えないのがいい!?
翌日から末っ子以外の3人(父親、長男、次男)は、アンジェラの一挙手一投足が気になって仕方がない。洋服を通して浮かび上がるアンジェラのカーヴィーなボディライン、かがんだ時にチラリと見える胸元の谷間、ワンピースの裾から覗くスラリとした美脚…などを必死に目で追う男たちの姿はどこかユーモラスだ。これはあくまで女性目線であって、どうやら男性たちは作中の登場人物と同じ目線で、ドキドキしながらアンジェラを眺めている感がある。ときめいたり興奮したり少年時代の青く切ない衝動を懐かしんだりしながら、この作品に何とも言えないエロティシズムを感じているらしいのだ。
もちろんそこには、美しい家政婦を演じるラウラ・アントネッリの妖艶な魅力も大きく関与しているのは間違いない。「綺麗な年上のお姉さんにドキドキするエロさ」「見えそうで見えないチラリズム(死語)」は、正直女性には共感しづらい領域である。
果たして次男は大人の男になれるのか
一家の中でアンジェラに最も積極的にアプローチを仕掛けていくのが、次男のニーノだ。家族でテレビを見ている時に隣に座っているアンジェラの太ももに触れてみたり、「ブラジャーなんか窮屈だろうから明日から着けるな」と命令してみたり、わざと梯子に上らせて本棚の上段の本を取らせてはスカートの中を覗いたりと、あの手この手でアンジェラを困らせる。父親の友人の神父を交えた食事の席では、テーブルの下でアンジェラのパンツを脱がせるという大胆な芸当までやってのける。だがどれもこれも寸止め感があって、「じゃあ一体いつもっとすごいことが起こるのか」という下世話な期待感に引っ張られながら、“馬の鼻先の人参”状態で物語は進行していく。
男性にとってはたまらない「チラリズムの美学」はさておき、果たしてニーノはアンジェラの手ほどきを受けて大人の男になれるのか。いわゆる初体験モノの名作のひとつとされている作品である以上、その答えを知りたくないと言ったらウソになるだろう。答えを知りたい方は、ぜひ作品を視聴していただければと思う。(文:春蘭/ライター)
『青い体験』
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