生まれてすぐに両親が離婚、幼い頃から舞台に立つ
【この俳優に注目】ダイアン・レイン
10代だった1980年代から現在に至るまで、映画やTVシリーズで活躍を続けるダイアン・レイン。美貌と豊かな演技力で多彩なキャラクターを演じてきた彼女の半生もまた幼い頃から波瀾万丈で、ドラマティックな恋愛にも彩られている。
・デミ・ムーアの新章と波乱万丈な半生! 復讐劇『フュード』で悲劇のセレブ妻を熱演
ダイアンは1965年1月22日にニューヨークに生まれた。母はナイトクラブのシンガーでモデル、父は映画監督のジョン・カサヴェテスとワークショップを開催していた演技コーチだが、両親は彼女の生後2週間足らずで別れ、ダイアンは父親に育てられた。タクシー運転手をして生活費を稼いでいた父親は、助手席に彼女を乗せていたという。やがて劇団に入り、舞台で子役を務めるようになり、12歳の時に「桜の園」の公演で若き日のメリル・ストリープと共演している。
14歳で初主演、「新しいグレース・ケリー」と言わしめる
幼い頃から演技力を磨いたダイアンは14歳で映画『リトル・ロマンス』(1979年)で主演デビューを飾る。パリに暮らすアメリカ人の少女と地元の少年の淡いロマンスを描く作品で、共演したイギリスの名優ローレンス・オリヴィエはダイアンを「新しいグレース・ケリー」と、ノーブルな美を誇った往年の映画スターに例えて称賛。メディアでも高く評価され、ジョディ・フォスターやブルック・シールズなどと並ぶ10代のスターとして脚光を浴びた。
母とは疎遠だったが、美貌の秘訣を聞かれて…
映画出演や舞台公演で世界各地を回り、大人に囲まれた環境で彼女は同世代よりもずっと精神的に成長が早かったという。15歳で父から独立しようとしてロサンゼルスへ移住したが、すぐにニューヨークに戻り、友人とその家族に家賃を払って同居させてもらい、高校に通った。平凡な生活を経験したいという念願を叶えたのだが、下校時、長い間疎遠だった母親が突然現れ、彼女の拠点であるジョージア州まで連れ去られたこともある。
父と娘で訴えを起こしてニューヨークに戻った後、数年間は母と口も聞かなかったが、のちに和解した。2017年の来日時のインタビューでは、美しさの秘訣を聞かれて「私の場合は遺伝かな。母がとてもきれいだったの」と優しい表情で懐かしそうに語っている。
・『ボンジュール、アン』エレノア・コッポラ監督×ダイアン・レイン インタビュー
80年代は『アウトサイダー』『コットンクラブ』などの話題作に出演
10代半ば以降は映画を中心に活躍し、1982年にはローラ・ダーンとパンクバンドを結成する少女たちが主人公の『Ladies and Gentlemen, The Fabulous Stains (原題)』に主演し、1983年、フランシス・フォード・コッポラ監督の『アウトサイダー』でヒロインを演じた。マット・ディロンやトム・クルーズ、ロブ・ロウ、エミリオ・エステベス、パトリック・スウェイジが出演していたが、撮影時に最も有名だったのはダイアンだ。
コッポラ監督とは続けて『ランブルフィッシュ』(1983年)、さらに『コットンクラブ』(1984年)を撮った。彼女のキャリアにおいて、コッポラ監督とのコラボレーションは重要な要素であり、コッポラ家とは家族ぐるみの付き合いがあり、監督の妻エレノアの劇映画監督作『ボンジュール、アン』(2017年)にも主演している。トム・クルーズ主演の『卒業白書』やトム・ハンクス主演の『スプラッシュ』のオファーを断って主演したのが、女性ロックスターを演じた主演作『ストリート・オブ・ファイア』(1984年)で、日本でも大ヒットした。
ジョン・ボン・ジョヴィと交際後、俳優と最初の結婚
『コットンクラブ』のプロモーションでパリを訪れた際に知り合ったのが最初の夫となったクリストフ・ランベール(クリストファー・ランバート)だ。だが、当時ダイアンはジョン・ボン・ジョヴィと交際中で、クリストフとは2年後に『ダイアン・レイン/愛にふるえて』(1987年)で共演したのをきっかけに恋愛関係となり、1988年に結婚、1993年に娘エレノアが誕生するが、翌年離婚した。
不倫する主婦を演じた『運命の女』で新境地を開く
1990年代から2000年代はじめには日本映画『落陽』(1992年)やコッポラ監督の『ジャック』(1996年)、キアヌ・リーヴスと共演の『陽だまりのグラウンド』(2001年)などコンスタントに仕事を続けたが、キャリアの転機となったのは2002年の『運命の女』だ。若い男性と不倫関係になる主婦とその夫を描く同作でダイアンは第37回全米映画批評家協会賞主演女優賞を受賞、第75回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされた。
華やかな恋愛遍歴と地に足のついた聡明さと
華やかな恋愛遍歴も多くの注目を集めた。15歳で独立しようとした時はTV映画『Child Bride of Short Creek(原題)』で共演した4歳上のクリストファー・アトキンスと行動を共にし、ティモシー・ハットンや前述のジョン・ボン・ジョヴィと交際、クリストフ・ランベールと離婚後は、マーベル・シネマティックユニバース(MCU)のサノス役で知られるジョシュ・ブローリンと2004年から2013年まで結婚していた。
10代からずっとスターで居続けながら、地に足のついた聡明な人柄で、大人の女性のリアルを演じるのが巧みだ。『マン・オブ・スティール』(2013年)ではクラーク・ケント=スーパーマンの養母マーサ役でDCエクステンデッド・ユニバースの一員となり、ハリウッドの赤狩りに苦しめられた脚本家を描く『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015年)ではダグラス・トランボの妻を演じ、ピクサーの『インサイド・ヘッド』シリーズではライリーのママの声を務めている。
Netflixの『ハウス・オブ・カード 野望の階段』シーズン6や『成りあがり者』など、近年は配信シリーズにも活躍の場を広げているダイアンの最新出演作は『フュード/確執 カポーティ vs スワンたち』だ。
『フュード』でエミー賞助演女優賞にノミネート
作家のトルーマン・カポーティとニューヨークのセレブ妻たちのスキャンダラスな確執を描く同作でダイアンが演じるのは、男爵の称号を持つ銀行家の妻スリム・キース。ハリウッドの名匠ハワード・ホークスや映画プロデューサーとの結婚離婚歴があり、“スリム”というニックネーム通りのスレンダーで優雅な佇まいの女性で、当時の上流社会のファッションアイコンでもあった。
ナオミ・ワッツが演じる主人公ベイブらと共に、信頼を裏切って彼女たちを自作のネタにしたカポーティへの復讐に燃えるスリムの怒りを体現したダイアンは9月に発表される第76回エミー賞のリミテッド/アンソロジー・シリーズ部門で助演女優賞にノミネートされた。
ハリウッドという業界を知り尽くし、たくさん恋をして、自然に年齢を重ねた美を誇るダイアン・レインだからこその魅力、俳優としての円熟を堪能できる名演だ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『フュード/確執 カポーティ vs スワンたち』
[放送]BS10 スターチャンネルにて放送、[配信]スターチャンネルEX
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