2019年、エンターテインメントやセレブをめぐるニュースは例年以上に現実社会の問題と深く関わるものが多かった。
●性暴力加害者ワインスタインと複数原告の暫定の和解成立
2017年から始まった#MeToo運動のきっかけとなった、ハリウッドの元大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインによる性暴力事件の訴訟で、被害を訴えた30人以上の女性に対して和解金2500万ドルを支払うことで和解が成立した。
ワインスタイン本人は破産を検討、彼の映画会社「ワインスタイン・カンパニー」はすでに破産を申請し、事業閉鎖に伴って支払われる保険金4700万ドルから和解金が支払われる。ワインスタイン本人は和解金を支払う必要も、また罪を認める必要もないという。
・和解金27億円で合意のワインスタイン、新たなレイプ行為で告発される
このニュースには非難が殺到し、モデルで女優のエミリー・ラタコウスキーは映画のプレミアに出席した際、レッドカーペットで「F―k Harvey(くそったれ、ハーヴェイ)」と書いた二の腕を見せてポーズをとった。性被害を受けた人々や全産業における男女平等の実現を訴える団体「Time’s Up」も「権力を持つ加害者が被害者を食い物にしたうえで恩恵を受ける。システムの崩壊を示す、大きな問題です」と批判した。
12月11日(現地時間)、ニューヨークの裁判所に姿を見せたワインスタインは歩行器を使って歩いていたが、弁護士によると椎骨を痛めたため、翌日に手術を受ける予定だった。
1978年、ロサンゼルスで13歳の少女に性的暴行をしたことを認めた後、フランスに逃れたままのロマン・ポランスキー監督にも、以前から糾弾の声は上がっていた。新作『J’accuse(原題)』を発表した今年は新たに、過去の被害者が名乗り出た。
ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した『J’accuse』公開直前に、元女優で写真家のヴァランティーヌ・モニエが、1975年当時、18歳だった時にポランスキーに暴力を振るわれ、レイプされたと新聞紙上で公開書簡を発表した。19世紀の冤罪事件「ドレフュス事件」を扱った映画のテーマに合わせて、ポランスキーはインタビューなどで自身とドレフュス大尉を重ねた発言をしていたが、新たな告発を受けて映画のプロモーションはことごとく中止になり、上映ボイコット運動も始まった。
ポランスキーは疑惑を完全否定し、メディアが「私を怪物に仕立て上げようとしている」と週刊誌「パリマッチ」のインタビューで語っているが、風当たりはかなり厳しい。
●裏口入学事件で、有名女優たちが逮捕、懲役刑に
今年3月、アメリカの名門大学への不正入学スキャンダルが発覚した。大手企業のCEOなど40人近い富裕層が、子どもの入学試験や推薦入学で便宜を図ってもらうために、仲介役で大学入試ウィリアム・リック・シンガーに金銭を支払っていたことが明るみに出たが、その中には有名女優2人も含まれていた。
テレビドラマ『フルハウス』で知られるロリ・ロックリンと夫でデザイナーのモッシモ・ジアンヌーリは、娘2人を南カリフォルニア大学に入学させるために50万ドルを払った。『デスパレートな妻たち』で知られるフェリシティ・ハフマンは、娘の大学進学適性試験(SAT)の点数を水増しするために1万5000ドルを架空のチャリティ団体に支払ったことが発覚。
ハフマンは10月15日にカリフォルニア州の刑務所に入り、25日に出所した。
●黒人俳優ジャシー・スモレットが差別による暴行被害を自作自演
今年1月に、男2人から暴行を受けたヘイトクライムの被害者と報じられた俳優のジャシー・スモレットだが、1ヵ月後、暴行被害が自作自演だったとして逮捕された。ドラマ『Empire 成功の代償』に出演していたスモレットは、同性愛者でアフリカ系男性。イリノイ州シカゴで、男2人から同性愛者嫌悪と人種差別的な暴行を受けたと警察に通報したが、逆に、治安びん乱罪と虚偽通報の疑いで逮捕された。
犯人とされたナイジェリア人の兄弟がスモレットの知人だったことも発覚、警察側は、スモレットが自分のギャラに不満を持っていたことを自作自演の理由に上げた。マイノリティであることを利用した行為には同じアフリカ系の人々から非難が殺到した。
3月になると証拠不十分で16件の罪状全てが不起訴になったが、シカゴ市は警察当局が捜査に費やした経費13万ドルの支払いを求めて4月に民事訴訟を起こした。この騒動を受けて、スモレットはすでに撮影済みだった『Empire 成功の代償』の出演シーンがカットされたばかりか、6月になってファイナルシーズンへの出演はないことが、同シリーズのクリエイターであるリー・ダニエルズによって発表された。
●ヘンリー王子とメーガン妃への風当たり強まる
5月6日に、イギリス王室のサセックス公爵夫妻、ヘンリー王子とメーガン妃に第1子となる男児が誕生。アーチー・ハリソンと名づけられた。
メーガン妃が女優だったこともあり、夫妻は婚約時からメディアやSNSで面白おかしく取り上げられバッシングされることも多く、夫妻とメディアの関係は必ずしも良好とは言えない。プライバシーを守りたい夫妻にはロイヤルファミリーの一員という公の立場もあり、そこに矛盾が生じて批判を浴びてしまう。
夫妻は環境保全を訴え、サステイナブルな旅行を推進する「トラヴァリスト(Travalyst)」というプロジェクトを発足する一方、8月には家族での移動に2週間で4回プライベートジェットを使用したことで矛盾を指摘する声が上がった。夫妻を別荘に招き、プライベートジェットを手配したエルトン・ジョンが擁護コメントを出したが、非難の声は収まらなかった。
さらにヘンリー王子と兄のウィリアム王子の不仲説が流れ、ヘンリー王子は「私たちが今、別々の道にいることは確かです」と言及。メーガン妃は結婚後すぐにエリザベス女王と一緒に公務をこなし、お気に入りと言われていたが、最近は距離を置いているという。
11月末から休暇に入り、感謝祭を過ごすために家族で渡米した夫妻は、クリスマスもロイヤルファミリーには合流せず、メーガン妃の母と過ごすことを発表。イギリスを離れて海外移住するのでは、という噂もある。
12月に入って公務は離れているが、サセックス公爵夫妻の公式インスタグラムは更新している。2年前の婚約時や昨年行った慈善活動の様子など未公開の写真を何度か投稿しているが、これにも「税金を使ってばかりで、国民のために仕事をしない」などと批判の声が上がっている。
日本はもちろん、世界中で異常気象による被害が発生した2019年。16歳のグレタ・トゥーンベリさんをはじめ、気候変動を止めようとする人々の活躍が報じられたが、ハリウッドでも行動を起こすセレブたちが後を絶たない。気候変動への対策推進を求めるグレタさんや若者たちの活動に啓発され、毎週金曜にワシントンで抗議デモを企画、毎回のように逮捕されているのはジェーン・フォンダだ。
今年81歳のフォンダは10月11日(現地時間)に最初に逮捕され、翌週、翌々週そして11月第1週の金曜日にも逮捕され、この時は勾留されたが、その後もデモには参加し続けている。彼女の活動は「ファイアー・ドリル・フライデーズ」と名付けられ、彼女に賛同してデモに参加した、テッド・ダンソンやダイアン・レイン、パイパー・ペラーボらも逮捕されている。13日(現地時間)にはオスカー女優のサリー・フィールドも参加して逮捕され、フォンダの“共犯者”となった。
今年はブラジルの熱帯雨林アマゾンで大規模な火災が発生し、甚大な被害となった。広大なアマゾンの熱帯雨林は地球の酸素供給に大きな役割を果たす地域であり、焼失は地球全体の危機につながると言える。レオナルド・ディカプリオやYOSHIKIらが消火活動支援のために高額な寄付を表明、多くのセレブたちがSNSでメッセージを発信した。
火災については、ブラジル政府が火災による影響を軽視しているという声も上がっているが、同国のボルソナロ大統領は11月末に何の根拠も示さないままNGO関係者による放火だとインターネット配信映像で発言。ディカプリオがそのNGOに50万ドル寄付をしたと言い、「あなたはアマゾンを焼く行為に手を貸している」と主張した。ディカプリオはインスタグラムで、大統領が名前を出した団体には寄付していないとしたうえで、改めて「今後も、ブラジル先住民コミュニティや地方政府、科学者、教育者や、ブラジルの未来のためにアマゾン保護に取り組み続けている市民を支援し続けます」と宣言した。
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