【落語家・瀧川鯉八の映画でもみるか。/第6回】
2020年1月2日18時45分上映の『男はつらいよ お帰り 寅さん』を豊島ユナイテッドで見てきました。
ちょーーーーーーーーーーーー面白かったです!
たくさん笑って、たくさん涙が溢れてしょうがなかった!
以前このコラムでも書いたのですが、ぼくは寅さんファンなので待ちに待った最新作でしたが、正直期待していませんでした。
全然面白くなくても良かったんです。
ただ寅さんがもう一度見られるだけで良かったんです。
面白くなくてもいいじゃないかと自分に言い聞かせてたんです。
だってもう渥美清はいないんだから面白くなるわけないじゃないかと思っていたんです。
がっかりしないようにハードルを下げていたんです。
でも見てみたら面白かった!
ファンだから面白かったのかもしれません。
もちろんファンでない方もたくさんいらっしゃることでしょう。
誰もが好きな映画なんてあるわけないんだから。
でも男はつらいよのファンというのはものすごい数で、ものすごい老若男女なんです。
ファンだけ楽しんでるだけじゃないかと言われても、その数や年齢層がものすごいんです。
それはとってもすごいことです。
ぼくが見に行った回は、お客さんの8割は年配の方々でした。
ご夫婦で来ている方が多かった。
みなさん寅さんと共に人生を送ってきた世代なんですが、もしかしたらみんな寅さんが好きだと思い込んでるだけで、そんなに回数を見たとか、全作品見たとかではないかもしれないと思ったんです。
寅さんはずっとテレビでも繰り返しやってるので、勝手に全部見た気になってる映画No.1だと思うんです。
それでもいいと思いました。
だって高尚に議論したり肩肘張って見る映画ではないし、それを目指した映画ではないと思うんです。
多くの人にずっと見てもらうように作られてるし、そういう映画を作るほうが難しいことだと思います。
だからぼくは好きです。
まずおじいちゃんおばあちゃんの私語が多いこと多いこと。
そしてその声の大きいこと大きいこと。
コンビニの袋のガサゴソがうるさいこと。
マナーとしては最悪なんだけど、いざ映画がはじまるとそれがまったく気にならなくなりました。
というより、そういう音があったほうがなんだか楽しいんです。
お年寄りの方が何人も途中でトイレに立つのも面白かった。
リリーさんが、おしっこ近いのよね、って言うところでトイレに行く人も。
今行ってもいいわよ、って言われる気になったのかもしれません。
渥美清さん扮する寅さんが出てきたときにみんなが一斉に笑ったんです。
ぼくも笑いました。
大スクリーンで見る寅さんはとっても面白い顔していたし、とっても若く、肌も綺麗で、ハリがあって、ハンサムでした。
渥美さんは本当にハンサムだと思いました。
あんないい顔してる人は今の時代にはいません。
顔だけでお金のとれる役者さんです。
お客さんのおじいちゃんおばあちゃんがよく笑うんです。
寅さんのギャグや一挙手一投足に笑う。
ぼくも笑う。
劇場で自然発生的にみんな笑う。
有名なメロン騒動のときに、最後におばちゃんが泣き出してしまうところでもみんな笑う。
そこは実は笑いどころではないはずなのにみんな笑ってる。
昔のあるあるネタみたいな笑いなのかなと思ったら違いました。
みんな哀しいけど笑ってるんです。
笑い飛ばさなきゃ生きてこられなかった時代を送ってきたんです。
それは今の時代もです。
ぼくもみんなも寅さんが出てくるだけで、泣きながら笑っていました。
満と泉ちゃんのラストシーンでは、みんな静まり返って感動して泣いてる。
ニューシネマパラダイスのように過去のマドンナたちが出てくるところでは映画という芸術の素晴らしさがすべて詰まっていました。
エンドロールの渥美さんの歌ではもう号泣。
映画が終わると拍手喝采でした。
それはとても美しい光景でした。
寅さんは帰ってきたけど、これが本当のお別れであることもみんな分かっているのです。
でもありがとうって言いたくて拍手したんです。
ちょっぴり寂しい気持ちにもなりました。
でもまた映画館に行けば会えるんです。
そんな作品を作ってくれて、ファンの気持ちを整理させてくれた作品を作ってくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。
ぼくは渥美清さんが大好きです。
こんな役者は世界をみてもいないです。
世界のことは知らないけどいないような気がします。
大天才です。
男はつらいよに関わるスタッフのみなさんも渥美さんが好きなんだと思います。
生き返って、ずっと死なずにいて欲しいとさえ思います。
また明日見に行きたいと思います。
※【鯉八の映画でもみるか。】は毎月15日に連載中(朝7時更新)。
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