第92回アカデミー賞で最多4冠に輝いた映画『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督と主演俳優のソン・ガンホが2月23日、東京・内幸町の日本記者クラブで行われた記者会見に出席。同作に対する反響の大きさや映画作りの姿勢など様々な事柄について語り、世界の映画史を代表するような「古典(映画)を作りたい」と願望を告白した。
日本でも1月10日より公開中で、観客動員数は2月22日時点で220万人を突破し、興行収入も30億円超をマーク。映画『私の頭の中の消しゴム』(04年)を超えて、15年ぶりに日本での韓国映画の興行収入1位の記録を塗り替えた。
この記録を受けてソン・ガンホは「20年ほど前の2000年代初頭には、韓国映画が日本で数多く紹介されていました」とかつての“韓流映画”の興隆に言及。「今は、そうした日韓の交流が少なくなってしまいましたが、この映画を契機に、韓国の素晴らしい作品、日本の優れた芸術家の作品が多くの人に受け入れられ、互いの文化に対し共感を抱くようになれば嬉しいです」と呼びかけた。
貧富の格差というテーマが多くの人々の心を打ったのではないかという指摘についてポン・ジュノ監督は「映画祭やプロモーションで多くの国を回って、貧富の格差という同時代的なテーマについての声もありましたが、私個人はそれは違うのではないかと思います。そうしたテーマは、見ている人に居心地の悪さを感じさせる部分もあると思うんです。それ以上に映画を見るみなさんに訴えかけたのは、予測不能な展開、予想を裏切る展開…特に後半の展開について『新鮮だった』という声を多く耳にしました」と見解を示した。
一方、ソン・ガンホは「この映画のタイトルは『パラサイト』(寄生)ですが、内容を見ていただければ、私たちはこの社会をどう生きるべきか? どう生きればよりよい世界になるか? “寄生”ではなく“共生”を描いた映画だと思います」と本作のメッセージについて解説した。
他方、普段から映画を作る上で心がけていることに関してポン・ジュノ監督は「告白するのが恥ずかしいのですが…」と苦笑いを浮かべて「古典(映画)を作りたい。自分の作品が(時代を超えて語り継がれる)古典になってほしいという妄想を持って映画を作っています」と回答。黒澤明監督の『七人の侍』(54年)やヒッチコックの『めまい』(58年)、キム・ギヨン監督の『下女』(60年)などの名作を挙げて「このような作品を作りたいと思っていますが、ほぼ妄想です(笑)。その上で、シナリオの執筆中や準備段階で、1対1で自分の書いているストーリーに向き合うこと、透明な状態で向き合うことを大事にしています。そこに興行的な成功や賞の獲得といった不純物を混ぜることなく準備を進め、映画を作っていくことを大切にしています」と真摯に述べた。
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