●恋に落ちる役の2人は、実は犬猿の仲!?
『ホーム・アローン』『ダイ・ハード』など、1980〜90年代のハリウッドの大ヒット映画の製作秘話を紹介するドキュメンタリー・シリーズ『ボクらを作った映画たち』はNetflixで配信中だ。
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全4話のシーズン1で紹介されるのは『ダーティ・ダンシング』(87)、『ホーム・アローン』(90)、『ゴーストバスターズ』(84)、『ダイ・ハード』(88)だ。
どのエピソードから見てもOKなので、気になったものから見始めるのがいいかもしれない。どの作品も公開から30年前後を経た今、エンターテインメントの定番になっているが、実はその多くが製作当時は「ヒットしない」と期待薄だったことに驚かされる。それまでの常識を打ち破り、新たな可能性を切り拓いた、というのがシーズン1に通底のテーマだろう。各作品の企画スタートから、キャスティング、撮影から完成まで、そしてその後に与えた影響まで、関係者の証言を中心に各エピソード50分前後で大ヒット作の知られざる舞台裏を知ることができる。
慌ただしく旅行に出かけた家族にうっかり置いてきぼりされ、クリスマス休暇を1人で過ごすことになったケビン少年の大活躍を描く『ホーム・アローン』も低予算作。監督(クリス・コロンバス)も主演の子役(マコーレー・カルキン)も当時は無名で、スタジオから「子ども騙し」と期待されていなかった。製作スタジオが変わったり、打ち切りの危機や撮影開始後のキャスト変更、体を張った危険なスタントの裏側について、コロンバス監督や、ケビンの家を狙う泥棒コンビの1人、マーヴを演じたダニエル・スターンらがとっておきの秘話を披露する。
逆に、予算をかけて人気コメディアンを揃えた『ゴーストバスターズ』は、大作映画とは思えないほど製作期間が短く、にも関わらず脚本は変更に次ぐ変更を重ね、完成ギリギリまで特撮が仕上がらないという超綱渡りな舞台裏が明かされる。「金のかかるコメディは儲からない」というスタジオの思い込みをいかにして打ち破るか、から始まり、80年代前半のアナログ感あふれる特撮風景も興味深い。証言者として登場するダン・エイクロイドと共に幽霊退治の「ゴーストバスターズ」を演じたビル・マーレイとハロルド・ライミスの友情の物語は感動的だ。
テレビ俳優だったブルース・ウィリスを一躍映画スターに変えた『ダイ・ハード』は、アーノルド・シュワルツェネッガーやシルヴェスター・スタローンが象徴だったアクション・ヒーローのイメージを一新させた。偶然にもテロ襲撃現場に居合わせ、テロリストたちと戦うはめになった普通の男が主人公というのは80年代には画期的なものだった。主人公が隠れて助けを呼ぼうとするなんて、と言われながら、笑いの要素を追求した脚本のリライト、タフなアクション・ヒーローの定型を笑い飛ばす演出を貫いた現場の話が面白い。テロ集団のボスを演じたアラン・リックマンはそれまで舞台俳優で、一度も銃を手にしたことがなく扱いに苦労したこと、爆発やカーアクションもほとんどCGに頼らず、ロケ現場では近隣からクレーム続出だったことなど、出演者やジョン・マクティアナン監督の鮮明な記憶による証言はいつまでも聞いていたいほどだ。
昨年11月の配信スタートと同時に大反響を呼んだ本シリーズはシーズン2の製作が決定している。今度はどんな作品が取り上げられるのかが楽しみだ。
ちなみに「ボクらを作った映画たち」は、Netflixで2017年から配信されているドキュメンタリー・シリーズ「ボクらを作ったオモチャたち」(3シーズン)のスピンオフ。『スター・ウォーズ』シリーズの玩具フランチャイズ、バービー人形、レゴ、日本のハローキティまで網羅するラインナップで、愛され続けるオモチャたちの誕生と成功の背景を知ることができる。(文:冨永由紀/映画ライター)
『ボクらを作った映画たち』はNetflixで配信中。
冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。
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