のん、念願の“性格の悪い”役で新境地「これから悪い役で天下をとっていきます!」と高らかに宣言
原作者・柚木麻子は続編『私にふさわしいホテル2』を構想中!?
映画『私にふさわしいホテル』の完成披露上映会が開催され、主演ののん、田中圭、滝藤賢一、髙石あかり、原作者の柚木麻子と本作の監督を務めた堤幸彦が登壇した。
・のんが滝藤賢一にヘッドロック! 田中圭のネクタイを掴み一触即発!? 暴れ、歌い、踊り、破天荒な主人公のキャラを体現
逆境にあいながらも怒りのパワーで何度でも立ち上がり、不屈の精神と荒唐無稽な奇策で理不尽な文学界をのし上がっていく主人公・加代子を演じたのんは、「演じてみてすごく楽しかったです。本当に不遇な状況に置かれても、屈せずにへこまずに立ち向かっていくところが面白くて、カッコ良くもあり。わたしがやってきた役の中で一番性格が悪いと思います。それがすごく気持ち良かった」と笑顔でコメントし、会場を沸かせた。
加代子の大学時代の先輩で大手出版社の編集者を演じた田中は、のんとは初共演。その印象について質問されると、「普段はおっとりとしているけど、加代子になった瞬間ワーッとなるので。普段どこにそのパワーをしまっているんだろうと思って眺めてました」と返答。
それに対し、のんが「田中さんはおちゃめな方だなと思いました。(劇中に)加代子が焼きそばを食べるシーンがあったんですけど、その時にカットがかかった後で、田中さんが合間に焼きそばを食べていて。ホッコリしました」と語ると、田中も笑いながら「おなかがすいていたんだろうね」と返すなど、和気あいあいとした現場の雰囲気が垣間見えた。
加代子の因縁の相手となる大御所作家・東十条宗典を演じた滝藤は、のんとは3度目の共演となる。滝藤が「『あまちゃん』の時から変わらない、生まれたばかりの赤ちゃんの目というか、汚れなき目というか、あれから何年も経ったのに変わらないんだなと、驚きましたね」と語ると、のんも「うれしいですね。そんなことがあるんだとビックリしました。これからも目を守っていこうと思いました」と笑いながら返答。
続けて、のんが「わたしは3回目で、すごく楽しくやらせていただきました。東十条先生とのシーンが一番ヘンテコな状況がたくさんあるので、すごく楽しみました。台本を読んだときは東十条先生ってどう演じるんだろうと思っていたんですがドキドキワクワクハラハラしていたんですが、滝藤さんが演じているのを見て、本当にいとおしいキャラクターになっていて。すばらしいなと思って感動していました」と付け加えると、滝藤も「ありがとうございます」と頭を下げた。
一方、東十条のまな娘・美和子を演じた髙石は、「登場シーンは短かったですが、短いシーンだったからこそ、美和子が登場した瞬間の目とか、会話をしている途中の父への怒りの目線とか、そういうものに、より鋭さが増すことができたのかなと思います。休憩中もすごく仲良く話をさせていただいて。楽しかったです」と回顧。さらにのん、滝藤との共演についても「いつかご一緒したいと思っていた方々なので、本当に夢みたい。それを直接伝えさせていただくことができて、ぜいたくな時間だったなと思います」としみじみ語った。
そんなキャスト陣を見ていた堤監督は「最高のキャスティングじゃないですかね」と満足げな表情。「思った通りにできることってなかなかないんですけど、思った通りにできましたね。それはひとえにキャストの皆さんのおかげです」と感謝のコメント。
また「本当に大好きな作品です!」と太鼓判を押した原作者の柚木も、「正直、このキャストさんで実写化のお話をいただいた時は、たぶん国民的人気者ののんさんがやるから、ちょっといい子になるのかなとか。加代子には事情があったりするのかなとか。また滝藤さんや田中さんたち演じる敵たちとちょっと疑似恋愛のような空気が出るのかなとも思っていましたし、このキャストなら改変も我慢しようと思っていました。でも加代子は最後まで一回も恋愛の要素がなく、最後までいい子にはならない。加代子は最後までずっと自分のことだけを考えて、何も反省をしないというのが、本当にうれしかったんです。ありがとうございます!」とキャスト・監督陣に感謝。
堤監督も「それは最大の褒め言葉ですね」とニッコリ笑い、「本当にいさぎのいい原作、いさぎのいい台本だったので、できる限りのことをやりました」と返した。
くしくも本作の舞台となった「山の上ホテル」は今年の2月13日から老朽化のために休館となっていたが、ホテルのそばにある明治大学が、2031年の創立150周年記念事業の一環として「山の上ホテル」の土地と建物を取得。再整備することが今月15日に発表されたばかり。
柚木は「大学が買ってくれて良かった。やはりわたしも山の上ホテルが休館と聞いた時は、妄想で、作家がクラウドファンディングをすれば救えるのだろうか、などいろいろと考えていたんですが、まさかの明治大学が買い取ってくださって。やはり『山の上ホテル』にはハッピーエンドが似合うなと。この報道を聞いて良かったなと思った人もたくさんいたと思うんですが、この映画が公開される前にそういう良いニュースがあって。幸先の良い感じがします」と笑顔を見せた。
そして、文学界で下克上をもくろむ加代子にちなみ、キャスト陣が「自分が下克上をしたエピソード」を発表することに。まずは髙石が、ダンスレッスンで必死に練習して「ビリからセンターへ」。そして滝藤は「子どもに腕相撲で負けたこと」。田中は小学生の時に入っていたバスケ部で「小4でレギュラー」とそれぞれに回答。
最後にのんが「中島加代子」と返答。「わたしは本当に性格が悪い役をやりたかったので、ずっとインタビューでそう言い続けてきたんです。今までは誰も気付いてくれなかったんですが、ようやくやってきたか、という感じで下克上しました」と笑顔。さらに「これから悪い役で天下をとっていきます!」と高らかに宣言し、会場から拍手が送られたが、それを聞いた堤監督は「それは知りませんでした。いろんな角度で、いろんな演技ができる人だと思っていたので。まさかそこに特化しているとは思わなかったですね」と笑ってみせた。
のんは最後に、「敵も味方も巻き込んで突き進んでいく加代子が本当に気持ちがいいなと思って演じていました。小説を読んでもらうということにかけてはものすごく突き詰めている加代子だったので、すごく楽しかったです。そしてすばらしいキャストとお芝居ができて。堤監督、柚木先生のすばらしい原作をもってこの作品を送り届けることができてしあわせです。ぜひお楽しみください」と晴れやかな表情。
さらに、堤監督が「ここに居並ぶ皆さん、スタッフの皆さんの力でこの作品が完成してしあわせなんですが、ご覧になって面白いと思ったらどんどん広めていただいて。公開してからもなんだったら何度も見ていただいて。どうやら柚木先生の中には続編の構想があるようなので『私にふさわしいホテル2』を目指していきたいと思いますので、ぜひとも皆さま、楽しんでいただきつつも、ご協力お願いします」と続編に期待を寄せるひと幕もあった。
『私にふさわしいホテル』は12月27日より全国公開。
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