選挙、なにそれ?「物事は正しくあるべき」と考える人々の右往左往にホッコリする
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「民主主義のハンドメイド感がすごい」井上咲楽も絶賛
第96回アカデミー賞ブータン代表作品で国際長編映画賞のショートリストに選出され、世界各国の映画祭で絶賛されたブータン映画『お坊さまと鉄砲』。本作より、本編映像と著名人からのコメントを紹介する。
・【動画】選挙×銃!?“幻の銃”を所有する村の長老と交渉/映画『お坊さまと鉄砲』本編映像
本作は、監督デビュー作『ブータン 山の教室』(19年)が第94回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされ、ブータン映画初のオスカー候補という歴史的快挙を成し遂げたパオ・チョニン・ドルジ監督の最新作。2006年のブータンを舞台に、“はじめての選挙”によって持ち上がる村の騒動を描いたハートウォーミングな群像劇だ。
国王の退位により民主化への転換を迫られたブータンで、政府は4日後に“模擬選挙”の実施を決定する。この報を聞いたウラ村の高僧は、選挙の日までに、なぜか銃を2丁用意するよう若い僧に指示。時を同じくして、アメリカから“幻の銃”を探しにアンティークの銃コレクターが、そして選挙を教えるために選挙委員会が村に到着。銃と選挙を巡る思いがけない騒動が持ち上がる…。
今回紹介する本編映像は、アメリカからやってきた銃コレクターのロンが、“幻の銃”を所有する村の長老と交渉するシーン。7万5千ドルもの大金を払って銃を買い取ろうとするロンに対し、長老は「なんとまあ…多すぎる」というまさかのリアクション。予想もしなかった反応に戸惑うロンの様子は笑いを誘うが、同時にお金に対する考えの違いが浮き彫りになり、見ている側の価値観も揺さぶられる。
ドルジ監督は本作について、「ブータン人の無垢な部分は、重要な価値であり本作のテーマでもあります。残念なことに、近代的で教育水準の高い国へと変化するにつれ、私たちのこの美しい価値は失われ、捨て去られつつあります。現代人には“無垢”と“無知”の違いを区別できないのでしょう」と語っている。
あわせて、著名人からコメントが到着した。「ユーモアに溢れ不思議な幸福感に裹(つつ)まれた映画」(映画監督:滝田洋二郎)、「価値観を揺さぶられる衝撃作」(ドキュメンタリー監督:大島新)、「胸に刺さる映画だった」(フリーアナウンサー・俳優:宇垣美里)、「現代の世界を覆っている重苦しい雰囲気に爽やかな風を吹き込む傑作」(脳科学者:茂木健一郎)など、絶賛のコメントが寄せられた。
■滝田洋二郎(映画監督)
「国民総幸福」を国家のビジョンとするブータンの映画なのに、ラマ僧の「物事を正すため、次の満月までに銃を用意しなさい」の命に従いて、若い僧が昼間から鉄砲を担いで歩いても誰も不思議に思わない。ユーモアに溢れ不思議な幸福感に裹(つつ)まれた映画。何よりも“絵”で笑わせてくれるパオ・チョニン・ドルジ監督に脱帽です。
■茂木健一郎(脳科学者)
やられた! 登場した銃は必ず使われる映画の「鉄則」があるが、まさかあの結末になるとは!! 現代の世界を覆っている重苦しい雰囲気に爽やかな風を吹き込む傑作。ブータンに行きたくなる!!!
■大島新(ドキュメンタリー監督)
人はどんな「物語」を信じて生きるのか。伝統か。民主主義か。金か。銃か。2024年、日本は選挙で揺れた。初めて選挙が導入されようとするブータン社会を描いた、価値観を揺さぶられる衝撃作。
■宇垣美里(フリーアナウンサー・俳優)
ブータンの鮮やかな自然を背景に、コミカルかつシニカルに描かれる初の模擬選挙と銃の行方。民主主義や資本主義から距離を置いた国が舞台だからこそ、浮き彫りになるものが。何かと選挙で落ち込むことの多かった昨今だから、余計胸に刺さる映画だった。
■みうらじゅん(イラストレーターなど)
人間こそが、ざんねんないきもの。ボンノウの数が百八つもある。それ故、争いも絶えない。『お坊さまと鉄砲』、タイトルだけ聞くとそんな堅苦しいテーマの映画だと思ったが、違った。ざんねんないきものには間違いないが、人間には優しさとおかしさがあることを改めて気づかされる、そんな映画だった。
■井上咲楽(タレント)
民主主義のハンドメイド感がすごい。当たり前に選挙があると思っていた。民主主義で選挙で選択ができることの尊さ、選挙を浸透させることの難しさ。選挙期間になるとこぞって選挙啓発をして、選挙に行くなんてエライ!と褒め称えられる。それこそが日本の平和ボケを象徴しているのかもしれない。
■高野秀行(ノンフィクション作家)
人々の平穏な暮らしを破壊しかねない民主主義とそれに対抗しようとする僧侶……なんていう設定だけでも面白すぎる。世界で唯一無二の国ブータンでは映画も唯一無二だ。
■岡本多緒(俳優・モデル・映画監督)
鉄砲という人を殺める武器が、持つ人によって全く異なる意味を持つことを痛感させられる。民主主義とは何なのか、人々は本当に幸せになれるのか――その答えがますます見えにくくなっている今だからこそ、ぜひ見てほしい作品です。
■モーリー・ロバートソン(タレント・ジャーナリスト)
時が止まったような秘境・ブータンで初めて民主的な選挙が実施されることになった。静かな村には「発展」「人権」「伝統」といったさまざまな政治信条が押し寄せ、人々の間に対立が生じる。その時、老いた高僧が行動を起こす。分断からつながりへ、どうすれば戻れるのか? その問いに答える作品。
■秦正顕(「フリースタイルな僧侶たち」編集長)
僧侶は編集者だと言われることがあります。変わらない教えを、変わりゆく時代にどう伝えてゆけるのか。その大事なヒントを貰った気がします。変革に迫られ混乱の最中のブータンで、お坊さまが選び取った行動に、いち僧侶としてすっかり心を撃ち抜かれました。
『お坊さまと鉄砲』は現在公開中。
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