女性が尊厳を取り戻す物語であり、壁を打ち破った黒川の女たちへの鎮魂歌
80年前の戦時下で起きた幾重にも重なる加害の事実と犠牲の史実を綴ったドキュメンタリー『黒川の女たち』が公開されることが決定した。本作よりメインビジュアルを紹介する。
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今から80年前の満洲で起きた「接待」という名の性暴力の実態、日本の敗戦とともに消えたまぼろしの国で生きて日本に帰るために、敵であるロシア軍に助けを求めた開拓団の史実——。命と引き換えに犠牲となったのは、数えで18歳以上の女性たち。15人の女性たちは性の相手として差し出されたのだ。
この事実は長年語られることなく、沈黙の中に沈められていた。しかし、戦争から70年の年月を迎えようとしている2013年、公の場でこの事実を明かした。本作はそんな女性たちのオーラスストーリーを丁寧に紡いだ作品だ。

監督を務めたのは、「カジノ誘致」の是非を争点にした横浜市長選、その最前線を追い、反旗を翻した藤木幸夫と市民の姿を描いた映画『ハマのドン』(23年)の松原文枝。
80年前の戦時下、国策のもと実施された満蒙開拓により、中国はるか満洲の地に渡った開拓団。日本の敗戦が色濃くなる中、突如としてソ連軍が満洲に侵攻した。守ってくれるはずの関東軍の姿もなく、満蒙開拓団は過酷な状況に追い込まれ、集団自決を選択した開拓団もあれば、逃げ続けた末に息絶えた人も多かった。

そんな中、岐阜県から渡った黒川開拓団の人々は、生きて日本に帰るために、敵であるソ連軍に助けを求めた。しかし、その見返りは、数えで18歳以上の女性たちによる接待だった。接待の意味すらわからないまま、女性たちは性の相手として差し出されたのだ。
帰国後、女性たちを待っていたのは労いではなく、差別と偏見の目。口さがない誹謗中傷。同情から口を塞ぐ村の人々。込み上げる怒りと恐怖を抑え、身をひそめる女性たち。青春の時を過ごすはずだった行先は、多くの犠牲を出し今はどこにも存在しない国。身も心も傷を負った女性たちの声はかき消され、この事実は長年伏せられてきた。だが、黒川の女性たちは手を携えた。したこと、されたこと、みてきたこと。幾重にも重なる加害の事実と、犠牲の史実を封印させないために——。

公開決定にあわせて、本作のメインビジュアルが解禁された。満州で撮った女性たちのカメラ目線の1枚の写真、そして下に並ぶのは、この記憶を語るべくカメラの前に立ってくれた女性たちの表情。力強い1枚に仕上がっている。
また、本作の語りを担当した大竹しのぶよりコメントが到着した。
■大竹しのぶ
映画の中で、佐藤ハルエさんがひ孫の赤ちゃんに「笑った、笑った」と満面の笑みを浮かべて喜ばれて、手を合わせるシーンが大好きなんです。この世界に生まれて来てくれて有難うという気持ちが伝わって来て、いつまでもそういう時代が続いて欲しいなと願います。自分たちの孫やひ孫が幸せであり続けるために。過去をきちんと知り、未来を考えることをしなくてはいけないと思います。
『黒川の女たち』は2025年7月12日より全国順次公開。
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