「スーパー・サタデー(Super Saturday)」。7月4日土曜日はメディアでそう呼ばれるほど、誰もが待ちわびていた日で、イギリス全土で飲食店やレジャー施設が再開された。外出制限が導入されるより数日早く、3月20日から休業していたパブやレストランは、実に105日ぶりに客を迎え入れた。
・【ロンドン通信】ロンドンで全商店が営業再開!制限緩和で「2mルール」も見直し!?
先月23日に、政府から正式に営業再開へのGOサインが出たのに加えて、ソーシャル・ディスタンシングの2mルールは「1mプラス」に改められた。距離2mの確保が難しい場合には、マスクやフェイスシールドを着用するなどの対策を講じることで、1mでもOKとなる。4日から営業再開が許可されたのはレストラン、パブ、カフェなどの飲食店をはじめ、博物館、映画館、図書館、屋外テーマパーク、ホテル、そして美容院。だが、ナイトクラブ、屋内ジム、スイミングプール、演劇やミュージカルの劇場公演は含まれていない。
政府が発表したガイドライン(再開する店舗や施設側が守るべきルール、業種によって異なる)によると、飲食店はソーシャル・ディスタンシングのためテーブル数を縮小し、客は注文も会計もなるべく各テーブルで済ませる。また、来店客や店員の中に感染者が見つかった場合に、後から接触者を追跡できるように連絡先を伝えなければならない。混雑を避けるためにも予約は必須だ。
この日、ロンドン中心部に向かうべく午前中に家を出ると、まず見られた変化は大通りに面した美容院。昨日までずっとシャッターを降したままなので気付かなかったが、最寄駅に着くまで美容院が5軒もあった! どこも朝から忙しそうだ。お昼前に到着したレスタースクエア周辺の雰囲気は予想より落ち着いていた。午後になると少しずつ人が増え始め、屋外のテーブル席が賑わう。繁華街には公衆の消毒スタンドが設置され、レスタースクエアとピカデリーサーカスには「ハンドウォッシュ・ステーション」も登場。ステーションにいるスタッフに頼めば、使い捨てのマスクと手袋をもらうこともできる。
政府は制限を撤廃したわけではなく、市民に「責任ある行動」と在宅勤務の継続を求めている。「感染第2波」の懸念も拭えないなか、制限を緩めたのは、市民も経済界も”我慢の限界”に近づいているのを無視できなかったからだろう。現地メディアの報道によると、4日夜にロンドンのソーホー・エリアに多数の人が集まり、パブに入りきらない客が通りに溢れ出してかなりの過密状態をつくってしまった。
街に活気は戻りつつあるが、昼間のロンドン中心部は土日にしては閑散としていて、観光客の帰りを待ち望んでいるようにも見える。観光業を含め、3ヵ月間休業していた業種への打撃は非常に深刻だ。政府のガイダンス発表から10日間の猶予しかなかったので、4日のオープンに間に合わせることのできなかった店舗や「再開日未定」の施設は数多くある。レスタースクエアに面するシネコンODEONも、大英博物館もこの日は閉まったまま。ロンドンの経済再開はまだ、始まったばかりだ。
(Sara Suzuki/London)
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