【ロンドン通信】イギリスで映画館が105日ぶりに再開!ミュージカル界は野外シアターに活路

#ロンドン

ODEON(7/4に撮影)
ODEON(7/4に撮影)
ODEON(7/4に撮影)
ODEON(7/4に撮影)
VUE(7/4に撮影)
VUE(7/4に撮影)
ピカデリー劇場(7/4に撮影)
ハロルド ピンター劇場(7/4に撮影)
(7/4に撮影)
(7/4に撮影)

飲食店やレジャー施設の再開が許可された現地時間7月4日土曜日、イギリスで3月以来はじめて、105日ぶりに映画館が再開された。だがこの日に合わせて再開したのはODEONなど、一部の映画館にとどまる。再開に当たり、政府と業界団体が安全対策としてまとめたガイダンスは29ページにも及び、準備のために「9月まで再開を見送る」とするミニシアターもあったほどだ。

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“アフターコロナ”の話題作として世界的に注目されていた新作映画、クリストファー・ノーラン監督作『TENET テネット』とディズニーの実写版『ムーラン』は、アメリカ国内の感染状況の悪化を受けて全米公開日が再延期となった。英シネコンチェーンCineworldは当初7月10日に再開予定だったものの、2作の動向を受けて、急きょ再開日を7月31日に後ろ倒しした。VUEはまだ再開時期を発表していない。

Screen Dailyによると、イギリス(※イングランド)とアイルランドで再開した72の映画館から集計された、再開後初の週末ランキングは1位が『2分の1の魔法』(£21,626/約280万円)、2位が『トロールズ ミュージック★パワー』(£16,941/約220万円)、3位が『バッド・ボーイズ フォーライフ』(£16,070/約209万円)となった。(1£=130円換算)

ランキング4位に急浮上したのが、日本でも大ヒットを記録したヒュー・ジャックマン主演のミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』(£14,499/約188万円)。日本と同様に、休業明けの映画館では旧作の特別上映が編成されており、新作がないなか「映画館で見る最初の1本」に選ばれ、上位にランクインを果たした。

イギリス映画界では、配給会社も再開後の映画館を応援しようという動きがあり、「Relaunching Cinema: Content for Recovery」というリストが公表された。国内の各配給会社が権利を保有するライブラリー作品をまとめたリストで、『雨に唄えば』などの往年の名作から『ボヘミアン・ラプソディ』など近年のヒット作まで、国内外の全450タイトルをラインナップ。大小問わず、イギリス国内のすべての興行会社がリストを受け取り、編成に加えることができる。懐かしの名作や見逃していた作品のスクリーン上映は、105日間を耐え忍んできた映画ファンには嬉しいニュースだ。

映画館が再開された一方で、ミュージカルやコンサートなど、生の舞台や公演活動には再開の許可が下りていない。今月に入り、仕事ができず休業を続けるステージ・デザイナーらは、閉館中の劇場を白いテープで装飾する運動を始めた。テープには「Missing Live Theatre」とプリントされ、経済活動が再開へと向かう中、取り残されている演劇・アート界への支援と早期の再開を求めるメッセージが込められている。政府は関係者と共に安全な劇場再開に向けてのテストを行なっており、間もなく再開時期が発表される見通し。

そんな状況を受けて、ソーシャル・ディスタンスをしっかり確保でき、密閉空間に比べて感染リスクが低い、野外シアターやドライブイン・シアターに注目が集まっている。イギリスでは映画の野外上映イベントは毎夏開催されており、ハイド・パークやリージェンツ・パークなどの公園に巨大スクリーンを設置したり、リーズ城などの史跡が会場になることも。野外シアターは映画館より1ヵ月も早く、6月15日に再開が許可されている。

映画はもちろんのこと、ミュージカルも野外シアターでの再開に活路を見出している。ウエストエンドミュージカル「Six the Musical」はコロナ禍で延期していた公演を、ドライブイン・シアターで再開することを発表。8月と9月にロンドンを含めた12都市でのツアーが決定している。また、マンチェスターではドライブイン専用の施設を今夏オープンする計画が進行中。テント内の中央ステージを駐車スペースが360度取り囲む大規模なシアターだ。

外出制限中はあらゆるサービスが「オンライン」「デジタル」「ストリーミング配信」に移行され、エンターテインメントも例外ではなかった。野外シアターはこの流れに対抗できる、アフターコロナ、withコロナ時代の新トレンドとなるかもしれない。
(Sara Suzuki/London)