17年ぶりに死刑執行、大統領選も関係? アメリカにおける死刑を考えるために必見の3本
7月14日、アメリカ連邦政府としては17年ぶりとなる死刑が執行された(ただしアメリカでは、「州が施行する死刑」と「連邦政府が施行する死刑」があり、死刑が廃止されていない州では、この間も死刑は執行されていた)。このたび刑が執行されたのはダニエル・ルイス・リー死刑囚。彼は1996年に少女を含む3人の家族を殺害し、死刑が確定していた。さらにそれから2日後の16日には、ウェズリー・アイラ・パーキー死刑囚の刑も執行された。彼は1998年に起こした16歳の少女の暴行殺人事件により死刑を宣告されていた。
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短期間の間に死刑が2件も執行されたのは、大統領選を控えたトランプ大統領が、凶悪犯罪を厳罰化することで、「法と秩序」を守る存在であるということをアピールしたいのではないか、と言われている。そこで今回は、アメリカにおける死刑について、映画を通じて考えてみたい。
Netflixで配信中の『ニック・ヤリス~21年間 死刑囚だった男~』は、死刑囚として20年以上、刑務所に収監されていたニック・ヤリス本人が出演するドキュメンタリー。20年以上服役したある日、ニック・ヤリスは上訴を取り下げ、“自らの死刑執行を求める”嘆願書を提出する。しかしその決断が大きなうねりとなって、事件は大きく動き出す。その決断の背景にあったものとは何なのか。本作は全編、ヤリス本人の独白スタイルで展開。ところどころでイメージ映像が差し込まれるが、基本は彼自身の言葉だけで、鮮明なイメージを浮かび上がらせる。そこで語られるのは、刑務所の中の様子、他の囚人たちの姿、看守の立ち振る舞いなど。さらに彼が語る当時の出来事は、本人の意志とは裏腹に意外な方向に転がっていき、驚くべき事実が明らかになる――。
死刑囚を題材とした映画は数多く作られているが、中でも傑作のほまれ高いのは、俳優のティム・ロビンスがメガホンをとった1995年作『デッドマン・ウォーキング』だろう。スーザン・サランドン演じる修道女ヘレンと、ショーン・ペン演じる死刑囚マシューの交流を描き出した本作。実力派二人が織りなす重厚なドラマは多くの称賛を集め、米アカデミー賞では4部門にノミネート。見事、スーザン・サランドンが主演女優賞を獲得した。ちなみに「デッドマン・ウォーキング」とは、死刑囚が死刑台に向かう時に、看守が発する言葉のことである。
シャロン・ストーンが死刑囚を演じた映画『ラストダンス』という作品もあった。『デッドマン・ウォーキング』が賞レースを席巻したすぐ後に公開されたこともあり、当時はあまり話題とならなかった作品だが、州知事が死刑執行に大きな影響力を持っている、ということが理解できる1本だ。シャロン演じるシンディは、19歳の時に殺人を犯し、死刑を宣告される。過去3回にわたって死刑執行命令が出されたが、その都度控訴され、執行は中止されてきた。そして4回目の執行命令が出された時、彼女の担当となった新米弁護士リックは事件の再調査を実施。彼女の壮絶な過去を知る――という物語だ。当時、『氷の微笑』などで、セクシーでゴージャスなイメージを確立していた彼女が、本作では一転、ほぼノーメークで繊細な演技を見せている。(文:壬生智裕/映画ライター)
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