新型コロナウイルス感染拡大によって、公演の中止・延期・規模縮小などを余儀なくされているライブハウスが苦境に立たされている。7月20日には、ニューヨークの名門ジャズクラブ“Blue Note”を本店に持つジャズクラブ「名古屋ブルーノート」が、2020年8月15日をもって廃業するというニュースも報じられた。言うまでもなく、ライブハウスは多くの才能あふれるミュージシャンたちを発掘し、育ててきた文化の発信地である。それだけにライブハウスは多くの映画の舞台となってきた。
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その名も「ブルーノート」(ただしニューヨークの“Blue Note”の系列ではない)というパリのジャズクラブが登場するのは、ベルトラン・タヴェルニエ監督が1986年に発表した映画『ラウンド・ミッドナイト』だ。酒とドラッグに溺れるテナー・サックスの名手、デイル・ターナーと、彼を支える貧しいデザイナーのフランシスとの友情物語を描き出した同作では、ハービー・ハンコックが音楽監督を担当し、アカデミー賞のオリジナル作曲賞を受賞。主演のデクスター・ゴードンがアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。何よりもジャズ界の名プレーヤーが多数出演するライブシーンは至福のひとときだ。
世代を超えて愛されるアーティスト、ビートルズの若き日を、“もうひとりのビートルズ”と言われた初期メンバー、スチュアート・サトクリフの視点から描き出した音楽映画が『バックビート』だ。ドイツ・ハンブルクのクラブでの演奏の仕事にありついたビートルズのメンバーは、この土地での過酷な環境の中で腕を磨き、その後の躍進の礎を築いた。まさに彼らの原点ともいうべき日々が綴られるのがこの映画だ。ソニック・ユースのサーストン・ムーア、フー・ファイターズのデイヴ・グロールなど、オルタナティブ系アーティストたちによる劇中の楽曲も心を揺さぶられる。
かつて東新宿には、スピッツやエレファントカシマシ、筋肉少女帯など数多くのアーティストを輩出した「新宿JAM」という伝説のライブハウスがあったが、老朽化のために2017年12月31日に閉店した(現在は西永福に移転し、その魂を引き継いでいる)。THE COLLECTORSも結成後初のワンマンライブは「新宿JAM」だった。今では武道館公演を行うほどとなった彼らが「新宿JAM」閉店直前に同地に凱旋(がいせん)、“初ワンマン完全再現ライブ”を行った。そのライブの様子を軸に、いろいろな人たちの証言などを通じて、1980年代の東京モッズカルチャーシーンを紹介するのが、ドキュメンタリー映画『THE COLLECTORS さらば青春の新宿JAM』だ。ファッションや音楽、ヴェスパなどのスクーター…、モッズのバイブルと言われたイギリスの映画『さらば青春の光』に影響を受けた者たちが、自分の生き方を貫こうとする姿に胸が熱くなる。(文:壬生智裕/映画ライター)
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