Aiを使ってモノクロ動画のカラー化に取り組む京都大学発のグループ「十人十色」が、 クラウドファンディングで「ローマの休日」の全編フルカラー化に挑戦している。 9月29日時点で応援購入総額は250万円を超え、 達成率は500%を超えたという。応援購入サービス「Makuake」にてサポーターの募集を開始し、10月25日までDVDの応援購入が可能。10月下旬にカラー化、11月上旬にフレーム補間を終え、11月中旬に微調整、11月下旬から12月中旬に字幕を作成しリターンDVDを制作、12月下旬にはリターンを送付する。
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「『十人十色』はこの数年で生み出された画期的な技術を用いて、 2時間弱に渡る本編のすべてのフレームにカラー化処理を施します。」とある。 また、 フレームとフレームの間をAIによって補間することで 動画のフレームレート(コマ数)を倍増させるという。
YouTube「Aiンシュタイン チャンネル」では、過去に取り組んだAi化映像が公開されている。昭和34年(1959) に放映された教育映画、『六人姉妹』の冒頭7分45秒を見てみる。
旧作の映画を見慣れていない人が、映像がモノクロであるというだけで名作であっても見ないということがままある。Aiによるカラーリングのため、実際の色とは異なる可能性があることが前提だが、カラー化することで昔の作品でも親しみを持って見ることができるのは確かだ。
また、ここで謳われているフレーム補間も、すでに大半のテレビの映像処理ではじめから自動的に入っており、それをソフトの段階で行うという違でしかない。フレーム補間によって映画というよりもテレビドラマのように見えるが、YouTube&ディスプレイ世代にはむしろこれが自然なのかも知れない。
デジタル処理と人間の記憶・感覚
もちろん、映像作品を再生するにあたり、それが当時の技術において果たし得なかった到達点をより高めたのであればそれを使うべきだし、人が認識しやすくすること自体は悪いことではないだろう。
ただ、こと映像芸術となると話は違ってくるように思う。『ローマの休日』も、4Kリマスターによりブルーレイ化されたばかり(北米盤が9月15日、国内盤は12月1日発売)。これは、オリジナルのネガを探し出して丁寧につなぎ合わせ、全フレームを1枚ずつチェックしながら修復したもので、何度も見た人であるほど素晴らしい発見があるだろう。
『スター・ウォーズ』旧三部作を愛するコアなファンが、劇場やレーザーディスクで見た“オリジナル版“が、DVDとなってジョージ・ルーカス本人が施した改変に異を唱えた。宮崎駿の『千と千尋の神隠し』DVDは、フランス盤が赤く、北米盤は白いなどという騒動もあった。
あるいは、当初からセットがもともと持っていたアラまでも消されてしまい、それも含めて本来の作品だと言うべきだという人もいるし、フィルムが元々もっていた粒状性(フィルムグレイン)まで補正してツルツルの映像にしてしまうことに違和感がある人もいるだろう。
人の感覚はそれほどまでに繊細で、その人個人にとって印象的な記憶はその後の人の気持ちを左右する。スペック上はノイズだらけのレコードやカセットがいまだに尊ばれる理由もそこにある。当時はそれを前提にして芸術作品として仕上げていたのを忘れてはならない。
できあがった作品はすでに一人歩きしている以上、受け手がどう楽しみどう解釈しようと構わないはずだが、「Ai」の中身がブラックボックスであれば、Aiの名の下にいかようにでも言語(メッセージ性)が書き変えられてしまう可能性があることも知っておくべきだろう。(文:fy7d)
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